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生コン業界の仕事や暮らしに役立つ情報をくわしく。
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2022.03.24
オーナー会会議室で行われたKURS<2022年春闘>、第一回目集合交渉のもよう。
本格的な春の訪れを目前にした2022年3月16日、大阪市中央区の一般社団法人西日本建設関連オーナー会(以下、オーナー会)会議室において、近畿生コン関連協議会(以下、KURS)とオーナー会との<2022年春闘>集合交渉がはじまった。
今回もコロナ禍を鑑み、KURSからは連合・生コン産業労働組合、UA ゼンセン関西セメント関連産業労働組合、関西レディーミクスト労働組合、全日本建設交運一般労働組合関西支部の 4 労組代表のほか、KLWS(クルーズ=関西労供労組協議会)議長である松居順一郎氏、同副議長の山口喜代重氏と白土武裕氏ら3名も加えた、10 名体制で、統一要求書の趣旨説明に臨んだ。
交渉は、KURS幹事の木村敦豪氏の進行によりスタート、はじめに木村氏から「本日、上場企業では集中回答日を迎えましたが、多くの企業で<満額回答>との報道がありました。我々の生コン関連業界としても前進できる話し合いが、この場でできればと思いますので、よろしくお願いいたします」とのコメントがあった。まさにその思いがKURS、KLWSの総意だ。
はじめに、KURS副議長の本多裕重氏よりオーナー会側へ、春闘の協議に応じていただいたこと、また日頃の活動への協力に対する謝辞に続き「岸田政権が目玉政策として賃上げを打ち出し、大手企業の春闘もそれに呼応する流れになっています。しかし世界的には、ロシアによるウクライナ侵攻からの燃料高騰をはじめ、経済的懸念が増しており、皆さんご苦労されているとは思います。しかし我々労働者のほうも、今の状況のなかで生活をしていくうえでは、賃金の引き上げが必要だと感じております。関西の生コン業界の単価の状況は、経営陣のご努力によって安定してきている。そして来年は定価の設定ということでさらに好転するのではないかと思っております。そんななか今回の交渉は、前進が図れる場にしていきたいと思いますので、ぜひとも我々の要求に耳を傾けていただきたいと思います」と、挨拶。
挨拶を行うKURS副議長の本多裕重氏(写真中央)。写真右は進行役を務めたKURS幹事の木村敦豪氏。
続いてKLWS議長の松居順一郎氏からは、「我々、労供事業者の在り方は、業界のなかで大きく変わってきています。元々は本勤さんが7割を占め、我々3割が補助をしていた。ところが今は逆転して、8割方が労供事業者になっている。我々の条件は、ここで決められたガイドラインが基本にはなるんですが、実際は持ち帰り、各単組が個社においてそれぞれ契約をし直さなければならない。ですからここで決められたことは重要です。我々も協議会として5年目に入り、毎月一回ほど幹事会も行っている。11団体の影響力は、大変大きいと思います。しかし我々はこれからも、セメント生コン業界に貢献していこうと思っておりますので、この思いをご理解いただきたいと思います」と挨拶し、11団体の影響力と労供事業者の不安定な立場を訴えた。
挨拶を行うKLWS議長の松居順一郎(写真中央)。
対するオーナー会側からは、会長の菅生行男氏からKURS、KLWS側に対して、春闘開催への協力に対する謝辞をいただき、「今年は政府のいろんな問題もありますし、世界規模の課題もある。(春闘なので)お互い話し合いはするものの、円満な回答で終われるように頑張りたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
ガイドラインのお話についてですが、やはりオーナー会としては、どうしてもガイドラインという形でしか示せません。労使関係のあるところは、(諸条件について)そのガイドラインに沿ったかたちで決まっていっていると思うんですが、特にこれからは、未組織のところについても、ガイドラインを順守してもらえるよう徹底したいと思っておりますので、よろしくお願いいたします」と、先ほどの松居議長の挨拶を受けるかたちで、挨拶を行った。
挨拶を行う一般社団法人西日本建設関連オーナー会会長の菅生行男氏。
本来であればこの後、KURS事務局長の岡元氏より趣旨説明が行われるところだが、今回はその前に、配布資料の確認と説明が行われた。今回、5年目の春闘ということもあり、春闘前段の取り組みを行っていたからだ。
その活動で使われた資料は、➊在阪セメントメーカーを対象に行った<バラセメント輸送における「適正運賃収受」にむけた要請書>とその<結果報告書>、➋関西広域輸送協同組合(浦野正国理事長)に対する<生コン輸送事業の健全な発展とそこで働く労働者の処遇改善に関する要請書>、➌施工業者に連帯労組との関りを持たないよう要請する<生コン業界の秩序確立にむけての要請書>、そして➍オーナー会に対する<安全帯から「墜落制止用器具」の変更にあたっての要請書>、➎労供ネットワーク推進の準備であり、また新人生コンワーカーが初めて行く工場に対する不安や焦りを軽減し、事故防止・安定供給につなげる<プラントガイド(工場の手引書)>の提案書などがあり、今春闘が、業界発展を目的とした幅広い活動を行ったうえで迎えたことをアピールした。
先に述べた通り、労働者側は今回の春闘に対して、並々ならぬ思いがある。
というのは、2017年に連帯労組と袂を分け、大同団結してから、オーナー会とは新たな集団的労使関係の確立をめざし、常に業界発展、業界の秩序確立を第一に考えて、労働組合として正統な活動を行ってきた。しかしこの間、4回の春闘を行うも、当初から要求している賃上げが、未だ実現していないからだ。加えて、春闘で決まったガイドラインを守らない業者が少なくないことにも憤りを感じている。
このような思いから、労働者側としては、今年こそ前進ある回答を勝ち取りたいという強い思いで、今年の春闘に臨んでいるのだ。
事前活動の報告と趣旨説明を行うKURS事務局長の岡元貞道氏。
統一要求の趣旨説明については、この後、主要な部分のみ解説が行われ、その後は質疑応答へと移ったが、そこでも賃金やガイドライン順守に関する議論が中心となった。
労供事業者の賃金については、KLWS副議長の山口氏から、「この数年見てきて、日々雇用の(賃金の)部分が、置き去りにされてきていると感じる。例えば今、日額18,000円の生コンの仕事は魅力ある仕事ではないんです。もちろん月に20日も25日も働ければいいですが、実際は15日程度です。そうすると30万円に満たない。いまドライバーが集まらない原因はそこにあると思うんです。その部分を少しでもテコ入れをしていただければ人も増えてくるのでは?」と、忌憚のない意見が出され、これをきっかけに、オーナー会会長の菅生氏や同理事の山田英幸氏、KLWSの松居議長、山口副議長、KURSの本多副議長、岡元事務局長などからそれぞれ意見が出され、労使間での議論が白熱した。
意見を述べるKLWS副議長の山口喜代重氏(写真中央)。
労働者側としても、諸般の事情から鑑みて、様々な課題があることを理解できる面もある。また、設備投資の効果についても実感している。しかし賃金については、働く者の士気にかかわる重要な要素だ。結局この日の議論では結論には至らなかった。
というのは、一口に生コンワーカーの賃金と言っても、職場や働き方などによって感じ方が違うからだ。
プラントと輸送会社の働き方の違い、働く人の立場や考え方の違い、個社間の条件の違いなど、さまざまな要素・要因があってひとくくりにできない。そのうえ労働者側とオーナー側に聞こえてくる<声>にも違いがある。それらを完璧に調整するのは至難の業かもしれないが、春闘を契機に少しずつでも改善を図ってかなければならない。
KURS・KLWSとしてはオーナー会との交渉を通じて、前進ある回答を勝ち取り、<2022年春闘>を、その節目にしていきたい。
この後は、3月23日と30日に労使間の交渉が行われる。
意見を述べるオーナー会理事の山田英幸氏。
賃金、ガイドラインについて熱い議論を交わす交渉参加者。
<近畿生コン関連協議会統一要求書>要求項目
Ⅰ. 経済要求について
Ⅱ. 制度要求について
Ⅲ.「将来を見据え希望のもてる」労使関係確立
Ⅳ. 政策要求について
2022年<近畿生コン関連協議会統一要求書>の概要。