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  1. 『暑中コンクリート工事対策マニュアル2022』改訂報告会レポート

2022.06.29

『暑中コンクリート工事対策マニュアル2022』改訂報告会レポート

2022年6月3日、日本建築学会近畿支部(企画/材料・施工部会。以下、同学会)が中心となってまとめた、改訂版『暑中コンクリート工事における対策マニュアル2022』(以下、本マニュアル)の発刊にあわせて、大阪科学技術センター(大阪市西区)において、本マニュアルの改訂報告会が開催された。

今回は、新型コロナウイルス感染拡大予防に配慮して、座席着席数を減らしたことから1つのホールには入りきれず、講演を8階の大ホールで行い、それをZOOMで隣の中ホールへ中継した。当日は、登壇者のリアルな言葉を建築、土木、生コン製造関係者ら約220名が、熱心に耳を傾けた(写真上は大ホール)。

マニュアル各章を、登壇者が詳しく解説

報告会は、マニュアルの各章を登壇者が詳しく解説するスタイルだ。(株)関西宇部・大阪広域生コンクリート協同組合(以下、大阪広域協組)安田慎吾氏の進行でスタート。最初に同学会役員の鈴木直幹氏から挨拶があり、続いて(株)竹中工務店の岩清水隆氏より、報告会の主旨説明が行われた。

各章の内容に入り、まず付録3の<暑中期のコンクリートに関する各地区での実験結果>に関して、兵庫県・大阪府の実験結果を阪神生コン建材工業(株)の船尾孝好氏が解説。続いて滋賀県の結果説明を灰孝小野田レミコン(株)の山内和宏氏、京都府の結果説明を千原生コンクリート(株)の草姥裕也氏が、それぞれ報告した。

休憩をはさんで中盤がはじまった。第2章の<暑中期に施工されるコンクリートの各規・基準>について、(株)長谷工コーポレーションの林典男氏が解説。再登壇した岩清水隆氏がマニュアルの1章・3章・付録8・付録9を対象に、本マニュアルの<適用条件>を解説。続いて、設計・施工・生コン製造段階で重要となる、第4章<ブリーフィング(事前協議)>について、(株)竹中工務店の山田藍氏が解説。その後、2度目の休憩をはさんで、第5章<コンクリート材料・調合・製造・運搬時の暑中対策>を(株)関西宇部の岡田裕氏、第6章<施工および養生時の暑中対策>について、(株)淺沼組の荒木朗氏が解説した。

終盤は、マニュアルの運用と全体のまとめが、(株)淺沼組の山﨑順二氏よりあり、最後に大阪工業大学の中村成春氏によって、全体を振り返っての講評が行われ、4時間半におよぶ報告会をしめくくった。

司会進行を務めた(株)関西宇部・大阪広域協組:安田慎吾氏。

司会進行を務めた(株)関西宇部・大阪広域協組:安田慎吾氏。

挨拶を行う同学会役員:鈴木直幹氏。

挨拶を行う同学会役員:鈴木直幹氏。

阪神生コン建材工業(株):船尾孝好氏。

阪神生コン建材工業(株):船尾孝好氏。

2回の登壇を務めた(株)竹中工務店:岩清水隆氏。

2回の登壇を務めた(株)竹中工務店:岩清水隆氏。

灰孝小野田レミコン(株):山内和宏氏。

灰孝小野田レミコン(株):山内和宏氏。

千原生コンクリート(株):草姥裕也氏。

千原生コンクリート(株):草姥裕也氏。

(株)長谷工コーポレーション:林典男氏。

(株)長谷工コーポレーション:林典男氏。

(株)竹中工務店:山田藍氏。

(株)竹中工務店:山田藍氏。

(株)関西宇部:岡田裕氏。

(株)関西宇部:岡田裕氏。

(株)淺沼組:荒木朗氏。

(株)淺沼組:荒木朗氏。

(株)淺沼組:山﨑順二氏。

(株)淺沼組:山﨑順二氏。

大阪工業大学:中村成春氏。

大阪工業大学:中村成春氏。

暑中コンクリートの高温障害を防ぎ、安定供給したい

ここで、三刷目となった本マニュアルについて、簡単に説明しておこう。

マニュアルの中身は主に技術者が見るものなので、一見して図表や専門用語が多く取っ付きにくい印象だが、要するに、夏場に施工される生コンクリートは水分の蒸発が早く変質しやすい。そうなるとコンクリート表面がひび割れたり、強度、性質などに悪影響を及ぼすことがある。またプラント側としては、荷卸し時のコンクリート温度が高いと<戻りコン>になる恐れもある。

そこで、実験によってわかった多くのデータをもとに、どうすれば荷卸し時のコンクリートの高温障害を防げるか、またどんな条件が整えば(荷卸し時の生コン温度38℃を許容し)効率よく安定供給ができるか、などをまとめたものだ。

『暑中コンクリート工事における対策マニュアル2022』の表紙

『暑中コンクリート工事における対策マニュアル2022』の表紙

2009年の初版発行から、13年に及ぶ取り組み

本マニュアル発刊に至る経緯は、同学会と大阪広域協組が、暑中コンクリート工事に対して問題意識を持ったことからはじまる。

もともと同学会が発行する、国内建設工事の標準仕様書<JASS5>に、暑中コンクリートの該当期間は「日平均気温の平均値が25℃を超える期間」と示されていた。しかし近年の地球温暖化の影響により、気温が28℃を超える日が増え、荷卸し時のコンクリート温度が35℃を超えるケースも出てきた(下図参照。JASS5では35℃以下と規定、協議が必要)。

そこで同学会と大阪広域協組は、2009年から大阪府と兵庫県合わせて105ヶ所の生コンプラントで実機実験を敢行。その膨大なデータを分析・検討し、指針と共にマニュアルとして最初にまとめたものが、2013年に発刊した『暑中コンクリート工事における対策マニュアル2013』だ。その後、奈良県、和歌山県が参加し、新たな実験データを加え、2019年7月に同一次改訂版(2019年)を発刊。その後も精力的に実験を続け、今回、発刊した同二次改訂版(2022年)では、新たに滋賀県、京都府のプラントが参加し、適用地域を近畿2府4県247工場に広げて、内容的にも充実し、マニュアルとしてより活用しやすくなっている。

暑中期における荷卸し時のコンクリート温度測定結果(普通ポルトランドセメント)

暑中期における荷卸し時のコンクリート温度測定結果(普通ポルトランドセメント)

本取り組み内容を、国(内閣官房)が全国の通達に採用

先に述べたように、同学会と大阪広域協組がはじめたこの取り組みは、最初は1府1県からスタートしたが、その後、主旨に共感する近隣の関連団体にも波及して、現在は適用地域が2府4県に拡大している。

しかし、実際の波及効果はそれだけではなく、全国の建設、土木関連団体や企業などでも注目を集めているという。そして2020年6月には、大臣官房官庁営繕部整備課から、全国の整備担当者に宛てた通達書が出され、その中で、本マニュアルに示された条件が確認できた場合は、荷卸し時のコンクリート温度を38℃以下にすることを認めるなどの記述が示されている。つまり、近畿地区での本取り組みが、全国の指針となったということだ。

生コンワーカーも、暑中期の生コン温度に要注意

今回の改訂は、今年(2022年)の夏に間に合わせることを優先し、大幅な変更や図表の修正はせず、新しく参加した滋賀県・京都府・奈良県の実機実験データ、混和剤名を入れることなどにとどめている。

具体的な変更点や追加データについては、本マニュアルを参照していただきたいが、近畿地域で働く生コンワーカーとして認識しておいてほしいことは、夏期に生コンを製造・運搬する場合は、コンクリートの温度をなるべく下げるように意識し、工夫してほしいということだ。具体的な対策としてはブリーフィング(事前協議)の実施、セメント・骨材・水などの冷却や、混和剤として遅延型高性能AE減水剤の使用、生コン車ドラムの塗装色変更や遮熱・断熱塗装の採用、断熱カバーの装着、現場や待機場へのひさしの設置など、プラント側や施工側の判断による対策が多いが、生コンワーカーも待機場所になるべく日陰を選択する、待機時のドラムへタンクの水を放水する、道路の渋滞情報を共有するなど、できることもあるのではないだろうか。

また、ブリーフィング(事前協議)には参加できないが、始業ミーティングなどで、当日予想される気温や生コンの温度について、注意を促すことは可能だ。

本来であれば、もっと大きな視点で、地球環境への負荷を直接減らす活動からはじめることが必要ではあるが、SDGs(持続可能な開発目標)を意識しつつ、本マニュアルが全国の関係者により幅広く有効活用されることを願い、我々生コンワーカーとしても、夏場は生コンの温度を意識して作業を行うことで、微力ながら業界発展に貢献したい。

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