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近畿生コン関連協議会

推しプラ


あなたの[イチ推しプラント]はどこですか?


あなたの[イチ推しプラント]はどこですか?

  1. Vol.7 思いと行動力で、<外国人雇用>の道を開拓。

2023.11.20

Vol.7 思いと行動力で、<外国人雇用>の道を開拓。

生コンワーカーの目線で、近畿地域の<イチ推し生コンプラント(工場)>をご紹介する、新企画『推しプラ』。Vol.7は、広域協組・淡路ブロックの<淡路生コン工業(株)>(以下、同社)だ。


ご存じの通り、今様々な業界で人手不足が大きな問題になっている。我々の生コン関連業界でも、人材確保は最も重要な課題の一つとなっており、危機感を持つプラントでは、対策を立てて取り組んでいる。

そんななか同社は、常に高い意識と行動力で採用問題に取り組むことにより、他ブロックに先駆けて、外国人雇用の道を拓かれた。その外国人雇用のことも含め、同社の考えや様々な取り組みについて取材してきた。ぜひ、参考にしていただきたい。

取材にお応えいただいた営業部課長の静川浩幸氏、総務部課長の福岡誠子氏、取締役社長の井髙憲一氏、品質管理部のレ・ティ・トゥー・ホンさん、常務取締役の作田智治氏(左から順)。

取材にお応えいただいた営業部課長の静川浩幸氏、総務部課長の福岡誠子氏、取締役社長の井髙憲一氏、品質管理部のレ・ティ・トゥー・ホンさん、常務取締役の作田智治氏(左から順)。

【会社概要】
設立の契機となった<神戸淡路鳴門道>を使い、幅広いエリアをカバー

淡路島といえば、昔から特産のタマネギを中心とした農産物や鯛やタコ、鱧などの海産物、または慶野松原、鳴門の渦潮などで知られる関西屈指の景勝地として、そして明石海峡大橋や淡路島を縦断する神戸淡路鳴門自動車道(以下、神戸淡路鳴門道)が完成してからは、最新レジャースポットやテーマパークなどが楽しめる京阪神から近いリゾート地として、さらに最近では、兵庫や大阪に近い自然豊かな地域ということで、若者の移住先としても人気が高い。

そんな淡路島は南北に約55kmあり、大きく北部(淡路市)・中部(洲本市)・南部(南あわじ市)に分かれている。同社は淡路市の南東端、島のほぼ中央に位置する志筑新島という人工島内に立地する。

同社は、神戸淡路鳴門道を整備する際、島内の有力建設会社約10社を、株主として設立されたのがはじまりだ。1965年9月に、筆頭株主である淡路土建(株)(兵庫県洲本市)の意向により、兵庫県津名郡津名町(現、淡路市)で設立。現在の淡路市志筑新島が埋め立てられたのを機に、1984年8月、当地に移転された。現社長の井髙憲一氏は、元々、淡路土建の専務だが、同社の社長を兼務されてから約12年が経つ。

設立から40年弱、高層ビルや大規模マンションなどのない淡路島で、創業の契機となった神戸淡路鳴門道の開発工事はもとより、当時、淡路土建を中心に、株主になっていただいた地元の建設会社の仕事を受けることで、経営を続けてこられた。とは言え同社も、ずっと右肩上がりだった訳ではない。苦しい時期もあった。

「やっぱり昔は価格競争がありました。でも2017年に広域協組に加盟してからは価格が安定しているので本当に助かります。今の単価はお客様にとってはちょっと申し訳ない気もしますけど、材料代も上がっていますし、まずは社員の待遇も改善していかないといけません。それがいちばんですね」と、キッパリ。働きやすい職場環境にしなければ、組織や技術の継承が難しいことを、実感しておられるのだ。そして広域協組への加盟のメリットは単価だけではない。「広域協組に加盟してから私が感じているのは、品質管理や安全教育について、指導していただけることが非常にありがたい。この2つは、自分達だけではなかなかできませんから」と、井髙氏。

現在は、神戸淡路鳴門道を利用するアクセスの良さと、淡路島のほぼ中央に位置する絶好のロケーションを活かし、工場周辺だけでなく、島内の南へ北へと出荷エリアを拡大。現在は、自社で揃える大型から中型、立米(りゅうべい)車などの生コン車に加え、出荷量が多いときだけ、神戸や四国から傭車を依頼しながら、中北部の建築物件を中心に、津波対策の護岸工事や神戸淡路鳴門道の定期メンテナンスなどの土木物件や、地域の小規模なスポット物件まで、幅広いニーズに対応しておられる。

本社社屋 社屋の裏には自社保有の生コン車がズラリ

本社社屋(写真上)。社屋の裏には自社保有の生コン車がズラリ(写真下)。

≪工場概要≫

所在地 兵庫県淡路市志筑新島2番地の5
設立 昭和40年9月
(兵庫県津名郡津名町大谷935番地)
代表取締役 井髙 憲一
社員 19名(女性2名)
出荷量 19,500㎥/年(2022年度)
ミキサー 1基(3,000L)
生コン車台数 自社保有16台(10t車6台・8t車2台
・7t車1台・5t車2台・4t車2台・3t車3台)

≪ご協力いただいた方々≫

●取締役社長 井髙憲一氏
●常務取締役 作田智治氏
●営業部課長 静川浩幸氏
●総務部課長 福岡誠子氏
●品質管理部 レ・ティ・トゥー・ホンさん

【地域貢献】
地元にある特別支援学校生の、体験活動受け入れを即決。

  • 3.すべての人に健康と福祉を
  • 8.働きがいも経済成長も
  • 9.産業と技術革新の基盤をつくろう
  • 10.人や国の不平等をなくそう
  • 11.住み続けられるまちづくりを
  • 12.つくる責任つかう責任
  • 17.パートナーシップで目標を達成しよう

淡路島と言えば、1995年に発生した<阪神・淡路大震災>の震源地。普段から地域社会とのつながりは非常に大切にしている。

特に防災に関しては、どこよりも高い意識を持っており、同社も広域協組の考えに賛同し、2020年2月より、島内3市と<災害時における用水等の供給支援に関する協定>を締結。2022年11月には、全島一斉に行われた<淡路島総合防災訓練>で、洲本会場に初参加。生コン車で消火用水を搬送し、放水訓練の支援を行った。このときの模様は、本サイトのKURSレポートでも紹介している。

また、地域との良好な関係は普段の行動からとの思いから、毎月1日の始業1時間前から、社屋の周辺や、プラントのそばにある材料置き場の周辺を清掃して、砂利や砂などでスリップ事故などが起きないよう、また少しでも美観を損ねないように気を配っておられる。

そして同社ならではの地域貢献と言えるのが、2年前から行われている、兵庫県立あわじ特別支援学校(以下、同校)の生徒の受け入れだ。職業体験活動を目的に数名を受け入れ、様々な仕事を経験してもらうなかで、働くことや職場でのコミュニケーションの大切さなどを学んでもらう場として、活用してもらっているのだ。「静川課長から提案をもらったとき『それはええことや!』と、すぐに賛成しました」と、微笑む井髙氏。実はこの取り組みは、営業課長である静川浩幸氏の奥様が、同校の教諭をされていたことが縁となってはじまった取り組みだ、これほど地域のことを思いやる企業は、生コン業界以外を含めてもそう多くないだろう。

毎月1日に行われる清掃活動。

毎月1日に行われる清掃活動。

【福利厚生・働きやすさ】
社員の働きやすい職場環境づくりには、細かく配慮。

  • 3.すべての人に健康と福祉を
  • 8.働きがいも経済成長も
  • 9.産業と技術革新の基盤をつくろう
  • 11.住み続けられるまちづくりを
  • 12.つくる責任つかう責任
  • 17.パートナーシップで目標を達成しよう

誤解を恐れずに言うと、各種社会保険(雇用・労災・健康・厚生)や資格取得費用負担、有給休暇など、同社の福利厚生は、いわゆる基本的な内容以外、特別な取り組みはない。もちろん福利厚生の存在自体は重要なことだ。しかし同社では、それに加えて社員が働きやすい環境・関係づくりについて、非常に細かく配慮されている。

例えば、オフィス・コーヒー・サービスと契約をして、休息時に各自が、アイスでもホットでも好みのコーヒーを利用できるように社内にサーバーを設置している。「我々の仕事は安全第一なので、特にドライバーには社内でひと息入れてもらい、あせらず運転に集中してもらえるよう配慮している」と、井髙氏。細かいことだが大切なことだ。

また制服のほかに、夏場には熱中症対策として、ポロシャツと首周りの日よけ、現場へ行くドライバーには空調服を支給。冬場には電熱ヒーター入りの防寒ベストを支給し、働きやすい環境を整えている。

また社内に<芝好会>というゴルフ同好会があり、社員はもとより材料メーカーとのコンペを年2回開催。仕事がスムーズに進むよう、コミュニケーションの円滑化による良好な関係づくりも忘れていない。

【仕事へのこだわり】
最新アプリを業務に活かして、<クイック・レスポンス>を徹底。

  • 9.産業と技術革新の基盤をつくろう
  • 11.住み続けられるまちづくりを
  • 12.つくる責任つかう責任
  • 17.パートナーシップで目標を達成しよう

仕事をするうえで、同社がモットーとして大事にしているのが<クイック・レスポンス>だ。受注した生コンを納入することだけでなく、その間のやり取りや製造、試験など、各工程で迅速な反応を実践しておられる。

そして、そのクイック・レスポンスを裏で支えているのが、NTT西日本のビジネス・チャット・アプリだ。

これは、LINE®のような手軽さで、簡単に情報共有ができる社内連絡網のようなアプリで、社内のパソコンや社用端末、個人のスマホなどを使って出荷予定や行動予定、技術情報、現場情報などを、タイムリーに管理できる。例えばドライバーとのやり取りは、一般的に無線を使うが、音声だけのやり取りとなるのに対して、このアプリでは画像や文字が残るのに加えて、誰が見たかが分かるようになっている。つまり、見た・見ていないのムダなやり取りがないということだ。このアプリの導入によって、「例えばドライバー間で、渋滞などの交通情報を共有したり、その日、現場に納入する生コンの配合情報を共有したりしています」と、静川氏。これにより、仕事のスピードアップや確認作業の省略など、仕事の効率化と共に、必要な情報を共有することで、誤納防止などにも貢献している。

どのプラントでも導入できるわけではないと思うが、参考にしていただきたい。

情報共有、情報の正確性で<クイック・レスポンス>を支える<ビジネス・チャット・アプリ>。

情報共有、情報の正確性で<クイック・レスポンス>を支える<ビジネス・チャット・アプリ>。

【リクルート対策】
インターンシップや外国人雇用など、人材獲得には意欲的に行動。

  • 5.ジェンダー平等を実現しよう
  • 8.働きがいも経済成長も
  • 9.産業と技術革新の基盤をつくろう
  • 10.人や国の不平等をなくそう
  • 11.住み続けられるまちづくりを
  • 12.つくる責任つかう責任
  • 17.パートナーシップで目標を達成しよう

同社のリクルート対策として特筆すべき取り組みは、3年前からグループ会社の淡路土建と連携して、兵庫県立兵庫工業高校の生徒に対して行っているインターンシップだ。約4日間の体験中の1日を、同社での実習に充てている。製造や品質管理、場合によっては納入現場への見学などを経験してもらうことで、原料→製造→納入までの工程を学んでもらい、生コンワークのやりがいや魅力を伝えられるように努力を重ねておられるのだ。「とにかく『人が来ない』って言うててもはじまらんので、とにかく動かないと。1人入るとつながりができるので期待しているんです」と、明るく語る井髙氏の言葉に、未来への希望を感じる。

さらにドライバーに関しては、生活面の不安を気にせず働いてもらえるように、アルバイト的な雇用ではなく、基本的に正社員として雇っておられる。そして他企業を定年退職された方や、外国人女性技術者(後述)を受け入れるなど、既成概念にこだわらず正社員として、幅広い人材を受け入れておられる。

さて、同社の取り組みで最も気になるベトナム人留学生の雇用について、その就職のプロセスを説明したい。

まず、淡路市の日本語学校で学んでいた留学生が、「日本の生コン会社で働きたい」と願い、それを学校側に伝えていた。一方で同社は、普段から幅広く人材を求めていた。しかしこれだけでは何も起こらない。そこに双方の事情を知り、交流のある仲介者が存在した。それは、どちらとも取引のある地元銀行だった。

その銀行が両社に話を持ちかけたことから就職が決まった。外国人を雇う際に必要な手続きなどは、学校側の行政書士に依頼することでスムーズに行うことができたという。

今回の事例は、偶然生まれたのではない。同社が人材確保という課題について常に心に留め、事あるごとに口にし、地域企業との交流を大切にしていたことが、今回の事例を生んだではないだろうか。「とにかく動かないことには、はじまりませんから」。井髙氏の言葉が心に残る。

「面接のときに『ここで勉強をしたらベトナムへ帰って、国のために頑張りたい』と言われたので、これはしっかり教えなあかんと思って、全社挙げて育てています。現在は会社が借りたワンルームマンションに住み、日本人と同じ給与体系で働いています。とにかく特別扱いをしないという気配りが大事やと思います」と、井髙氏。これこそ本物の国際化と言えるのではないだろうか。

インターンシップでスランプ試験を学ぶ生徒。 試験室で仕事をしているホンさん。

インターンシップでスランプ試験を学ぶ生徒(写真上)。試験室で仕事をしているホンさん(写真下)。

【安全対策】
毎月1回を超える安全教育で、常に安全に対する注意を喚起。

  • 3.すべての人に健康と福祉を
  • 8.働きがいも経済成長も
  • 9.産業と技術革新の基盤をつくろう
  • 11.住み続けられるまちづくりを
  • 12.つくる責任つかう責任
  • 17.パートナーシップで目標を達成しよう

同社は、安全に対しても他社とは少し違った、丁寧なスタンスで取り組んでおられる。

もちろん毎朝のミーティングの励行やアルコールチェック、車両点検などの基本的な対策は、もちろん普段から行っておられる。しかし同社の安全対策は、それだけでは終わらない。

常務取締役の作田智治氏によると「ウチでは、毎月1回の骨材ヤード周辺の清掃が終わったあとに、警察署からお借りした交通安全協会の教則DVDを使って、交通安全教育をやっています。そのほか、グループ会社である淡路土建の安全室長にお願いして、労働安全衛生教育を定期的に実施しています」。安全に対する注意喚起は、忘れないように定期的に行うことが重要だ。その意味で、月1回以上の安全教育は、同社の安全には欠かせないものとなっている。

事故やトラブルは、会社としても大きなリスクとなるが、何より生コンワーカーにとって命の危険にさらされたり、ケガなどでダメージを受けることも多い。会社ぐるみでの安全対策は、働く者としても大変ありがたいことだ。

淡路土建の安全室長による労働安全衛生教育のもよう。

淡路土建の安全室長による労働安全衛生教育のもよう。

【ビジョン】
近い将来、SDGsを意識して、魅力ある企業をめざしたい。

  • 3.すべての人に健康と福祉を
  • 4.質の高い教育をみんなに
  • 5.ジェンダー平等を実現しよう
  • 8.働きがいも経済成長も
  • 9.産業と技術革新の基盤をつくろう
  • 11.住み続けられるまちづくりを
  • 12.つくる責任つかう責任

井髙氏によると、同社の今後のビジョンは、近い将来行う予定のプラントの大規模改修だという。

「基本的には、品質管理をより確実なものにしたい。そしてこれからはSDGsを意識した時代になるので、環境負荷低減とか付加価値の高いコンクリートとか、時代のニーズに対応した生コンクリートの製造に対応できるようにしたい」と、井髙氏。これまでも必要に応じて部分改修を行ってきたが、次は最新設備の導入をめざすという。

実は取材当日、同社からいただいた資料を見て感心した。資料を綴じるのに、ホチキスの針を使わない、穴あけ式を採用しておられるのだ。小さなことだが、会社として採用するという意識が大切だ。このことから判断しても、同社の環境に対する意識が高いことは理解できる。

そして同社のビジョンは設備だけではない。「もちろん、この思いを実現するには、設備だけではなくて、製造や品質管理に係る人の技術レベルの向上もめざします。またそのためにも、若い人材の確保に向けて、魅力ある企業をめざします」と、改善の方向は、職場環境や社員の処遇にまでおよぶ勢いだ。設備も、人材も、常に一歩先を見つめて、少しでも良くしようという意識に感服する。魅力的なプラントづくりを通して、淡路島の新しい生コンプラント像をめざしてほしい。

◎ここが私のイチ推しポイント!

『みんながいつも笑顔で働いているのが、この会社の良いところ!』

  • 3.すべての人に健康と福祉を
  • 8.働きがいも経済成長も
  • 17.パートナーシップで目標を達成しよう

<品質管理部 レ・ティ・トゥー・ホンさん>

自国ベトナムの大学で、コンクリートの勉強をしておられたホンさん。

日本のコンクリート製造技術の高さを知り、日本の生コン会社で働きたいと思い留学。「ベトナムは台風や洪水による被害が多く、災害に強い社会をつくるためには、堅固な土木建築物やインフラの整備が必要だと感じました」と、志の高いホンさん。まずは日本語を学ぶために、淡路市の日本語学校へ。その後、縁あって同社への就職が決まった。

現在は、品質管理部で配合計画書の作成や、様々な試験などの仕事に携わっているという。

淡路市の風景や人々の優しさに触れて、故郷のベトナムによく似ていることから、好感を持ち、「淡路島の生コン会社で働きたい!」との思いがつのり、念願かなって同社への就職が決まった。「初めての外国人の受け入れにも関わらず、気さくに対応してくれて、とても感謝しています。みんながいつも笑顔で働いているところが、この会社の良いところだと思います」と、微笑むホンさん。

楽しみは、休日に友達と一緒に神戸や大阪をはじめ、いろんなところへ行って買い物をしたり、美味しいものを食べたりすることだそう。当面の目標は、今年、コンクリート技士の資格を取得すること。今は合格に向けて勉強中で、もちろん次の目標はコンクリート主任技士だ。

母国発展の役に立てるよう、同社でコンクリート製造技術のこと、会社や社会のことなど、いろんなことを学んでほしい。

会食中のホンさん(左)。「友達と美味しいものを食べるのが楽しみ」。

会食中のホンさん(左)。「友達と美味しいものを食べるのが楽しみ」。

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