推しプラ
あなたの[イチ推しプラント]はどこですか?
あなたの[イチ推しプラント]はどこですか?
2023.10.23
生コンワーカーの目線で、近畿地域の<イチ推し生コンプラント(工場)>をご紹介する、新企画『推しプラ』。Vol.6は、広域協組・中央ブロックの< (株)八光なみはや工場>(以下、同社または同工場)だ。
大阪市内周辺で、生コン車が走ったり荷卸しをしたりしている場面をよく見かけるが、そのなかでかなり高い割合で遭遇するのが<(株)八光>の生コン車ではないだろうか。
よく見かけるということは、単純に考えると生コン車の台数が多い、工場が多い、出荷量が多い…などの理由が考えられるが、実際にはどのような理由やご苦労があるのか、率直なお話をうかがってきた。
同工場が立地するのは、大阪市大正区南西部に位置する鶴町の準工業地帯だ。まずは、生コン車を市内でよく見かける理由をうかがった。「ひとつには出荷量でしょうか。なみはや工場だけで年間約10万㎥。広域協組のなかでも大体上位5番までには入ります」。お話しいただいたのは、取締役で製造部部長の石橋正德氏だ。1工場で約10万㎥ということは、3工場で約30万㎥。その出荷量の多さに、いきなりカウンターパンチを食らった。大阪市内で同社の看板を付けて走っている生コン車を、よく見かけるのも当然だ。
「八光は加美工場・鶴町工場・なみはや工場と3工場ありますし、生コン車は傭車も入れると、常時70台〜90台は走っています。それに生コン車は、その日の出荷量に応じて、午前中ウチが忙しければウチの台数を増やして、午後から加美工場の出荷が多ければ、今度は加美工場に集中させる、というふうに生コン車を工場間でシェアしているので、多く見えるかも知れませんね」。本社内にコールセンターがあり、広域協組の割り当ても、地域のスポットも、同社3工場の出荷を統括管理して振り分けている。この体制により、3工場を1工場の感覚で稼働しておられるのだ。同工場は、主に大阪市内を担当されている。
同社は、1993年4月に東大阪市友井にて設立、同年10月に大阪市平野区で創業された。1998年4月に大阪市平野区に加美工場が完成したのち、2001年2月に鶴町工場が、そして2004年6月にはなみはや工場が完成し、現在に続く3工場体制となる。
実は、今でこそ出荷量の多い同社だが、以前からこのような安定経営ではなかった。
創業時の強い思いとは裏腹に、当時の同社は、経営的には厳しい日々が続いていたという。当時のエピソードを石橋氏にうかがうと、「今では笑い話ですが、私が入社した年、3工場で1ヶ月に3万㎥も出荷したことがあったんです。ところが、そのときの利益がわずか。それで私も、ちょっとひどいなぁ…と思って、当時の上司に『皆があんなに苦労してこれだけしか儲からないのか?』って、キレたことがありました(笑)。今思えば、利益を度外視しても、会社を継続させる必要があったんですよね」。このような苦境を経てきたことで、現在の経営の基礎が成立しているのだ。「生コン価格が安定したことで、工場の売り上げが上がって、資金を社員の待遇や福利厚生にまわせるようになりました」と、石橋氏。
創業以来、<顧客満足>をスローガンに、<生コンクリートのコンビニエンスサービス>を実現するため、<必要であれば24時間昼夜を問わず、365日対応できる生産体制を確立>してこられた。このような頑張りの結果、苦境を乗り越え、今は経営が安定している。このことはたいへん素晴らしいことだ。しかし一方で、後に詳しく述べるが、この好況が同社の新たな課題も生んでいる。
そんな同社の業績好転のきっかけは、2015年7月の広域協組への加盟だという。
「生コン工場にとって、価格の安定が何より大事なんです」と、安堵の表情を見せる石橋氏。それだけ近畿地域の生コン関連業界にとって、2015年の広域協組の大同団結は、重要な出来事だったに違いない。同工場は、このような背景のなか、中央ブロック管内で様々な現場をサポート、大阪市内の街づくりやインフラ整備などに、今日も奮闘しておられる。
所在地 | 大阪府大阪市大正区鶴町4-12 (本社/大阪府八尾市西久宝寺3番地1) |
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設立 | 平成16年6月(本社/平成5年4月) |
代表取締役 | 花井 和延 |
社員 | 7名(女性1名/配車係)+応援スタッフ |
出荷量 | 約90,000~100,000㎥/年 |
ミキサー | 1基(3,000L) |
生コン車台数 | 業務委託(3工場専属の輸送会社)。 41台(10t;12台、8t;15台、3t;14台) +傭車で、常時70台〜90台は稼働。 |
●取締役 製造部部長 石橋正德氏
●工場長 山本剛士氏
●試験係 中林卓也さん
準工業地域に位置する同工場は、どのように地域貢献を行っているのだろうか。石橋氏によると、「社会の一員として、近隣の自治会に入ったり、取引業者さんやゼネコンさんからの見学を受け入れたりもしています。そのほかに工場独自のものとしては、道路関係ですね」とのこと。道路関係とは何だろう。
「実は、住民との取り決めで、生コン車は、工場のすぐ前の大通り(鶴浜通筋線)を通らないように、迂回して出入りしているんです」と、石橋氏。昼間の人通りは少ないが、工場のすぐ近くにはバス停(鶴町4丁目北)や集合住宅がある。協定自体はかなり以前に締結され、明確な経緯は分からないが、通勤通学時間帯や買い物など、住民の方々が使うことを想定しての、締結だったのではないだろうか。
また、生コン工場では、生コン車が工場内を移動・出入りをする際、タイヤに砂やセメントなどを付着させた状態で走行してしまうことがある。これを放っておくと、路面の美観の問題だけでなく、路肩に溜まった砂やセメントなどが排水溝に詰まったり、バイクや自転車のスリップ事故の原因になることもある。そのため同工場では、近隣の企業とともに清掃業者に依頼し、週に2回、道路清掃車を走らせ、周辺道路をきれいにしているのだ。同工場の立地する区域は準工業地域で、軽工業の工場やサービス施設が建つが、第一種住居地域と隣接しているため、戸建て住宅や集合住宅、商店、オフィスなども多く、路面清掃は地域社会の一員として大切なポイントだ。すぐそばに同社の鶴町工場もあるため、生コン車の出入りや路面状態には特に注意している。
さらに、広域協組加盟の生コン工場としても、地域としての協調を重視している。
同社の出荷量から想像すると、やはり社員の働き方が気になる。そのことについて石橋氏にうかがった。
「実はこれが我々の、今いちばんの悩みというか課題なんですが、お陰様で売り上げは安定しているものの、その反面、不本意ながら、まだ週休二日制が導入できていないんです。休日を増やしたいという思いは常にあります。何か良い方法がないかと、社長や専務とも常に話していますし、色々と試してもいます」と、山本氏と2人、腕を組む。売り上げが好調な半面、休日(土曜休日)が少ないことが、同工場、同社の悩みなのだ。これが前々項で述べた新たな課題だ。
もちろん同社では、その課題を克服するための努力もしておられる。
例えば普段の仕事にも、社員に負担がかからないように出荷量の多い日には応援スタッフを依頼したり、<夜間出荷>がある場合には、応援スタッフに協力いただいて対応している。また社員の身体を気づかい、人間ドック補助として、1人上限10万円までを会社が負担。同社では、この健康診断のおかげで、ガンの早期発見につながったという社員が2、3名おられる。
そして給与については、ここでは具体的な数字は出せないが、同年代のなかではトップクラスに手厚いという。頑張ってくれた者には、厚遇で報いる。また社内行事では慰安旅行、忘年会、新年会はもとより、夏場の暑気払いなど、社長の花井和延氏が率先して、社員同士のコミュニケーションを深めておられるのだ。
世間では企業をホワイト、ブラックなどと勝手に色分けするが、それは内情を知らない他人が決めることではない。そこで<働く人がどう感じるか>が肝心だ。皆で一生懸命に働いて、みんなで分配する。それで社員が笑顔で働け、幸せを感じているなら、他人にどうこう言われる筋合いではないと思う。これこそ究極の<ギブ&テイク>だ。今回、取材をさせていただいたが、工場内で見かけた社員の誰もが明るく、元気な表情で働いている理由がこれで理解できた。
また同社は、週休二日制導入についても、あきらめている訳ではまったくない。
「これは私個人の思いで、まだ誰にも言っていないんですが、土曜日は比較的出荷が少ないので、土曜日を常に3工場稼働から2工場稼働に減らして、毎週1工場分の社員が交代で休む、という方法はどうかと考えています。これが第一歩になるんじゃないかと思うんです」。石橋氏の言葉に力がこもる。なるほど、もちろんクリアしなければならない課題はあるかもしれないが、これなら理論上は、交代制で土日を連休にすることはできる。ぜひ挑戦していただきたい。
そして石橋氏はそのための布石として、どの工場に誰が行っても仕事ができるよう、各工場にある操作盤を統一したり、若手を中心とした社員に、3工場をローテーションで回して、いつでも、どの工場でも仕事ができるよう教育をしている。これによって3工場間の協力し合う意識も生まれたという。
今すぐに状況を変えることは難しいかもしれないが、この強い気持ちと行動力があれば、そう遠くない将来、週休二日制導入の夢も叶うのではないだろうか。同社の対応には期待が持てる。
同工場では、社員に対する安全対策もしっかりと行っている。
「例えば、場内作業をするときは1人では行わず、必ず2人以上の複数名で動くようにしています」と、工場長の山本氏。生コン工場には危険な場所もある。万が一、1人で作業中に事故に遭った場合、発見が遅れることもある。また場内は機械の作動音や車両の走行音などで、SOSが聞こえにくいことがあるからだ。しかし2人以上で作業を行えば、万が一の場合にも、危険を防止したり、助けたりすることもできるからだ。このほかに、翌日、安全かつスムーズに仕事ができるように、終業後の場内点検も毎日行っている。
また、毎朝の始業ミーティングや車両点検も忘れてはいない。「現場のルールなどもありますし、最近は進入路の規制なども多いので、間違って焦りから事故やトラブルに発展しないように、傭車も専属も含めてミーティングで注意喚起をしています。特に、ウチが担当する中央ブロックは、荷卸し場への入退路が狭いことが多いため、注意喚起することが重要ですね」と、山本氏。
また普段からの安全に対する意識も高い。その一例が、<安全啓蒙ポスター>の掲示だ。一般社団法人西日本建設関連オーナー会と広域協組、大阪兵庫生コンクリート工業組合の協賛でKURS(近畿生コン関連協議会)が実施している<安全啓蒙キャンペーン>のポスターも、さっそく場内に貼っていただいている。これだけ意識の高いプラントなら、安心して働ける。
「なみはや工場は、できて約20年経つということで老朽化も進んできています。なので、施設・設備を一新したいというのはまずありますね」と、山本氏。なるほど工場長としては当然の思いだ。「それから、今後の技術継承のことを考えたら、もちろん若手社員をもっと入れたいですね」。リクルート対策としては、ホームページを新しくされて、本社では学校などへ募集をかけておられるというが、「やっぱり今は難しいですねぇ。新卒の人は、<年収400万円・週休二日制>を求めるという考え方が多くて、苦戦しています」と、首をかしげる。同社は充分に頑張っておられる。求人問題は、どこの工場も悩んでいる難しい問題だ。しかしこれをクリアするには、試行錯誤しながらでも前に動くしかない。
ひとつ言えることは、ひとくちに若者といっても、様々な考え方の若者がいるということではないだろうか。
例えば、今は新卒を中心とした<給与はそこそこでも自由な時間が大事>という若者が多い。しかしもう一方で、新卒ではないが既婚で2人、3人と子供がいて<家族との穏やかな生活や人生設計が大事>という若者も少なくはない。工場は、そんな若者の<希望>であるという見方もできる。それも多様性のひとつではないだろうか。会社には、まだ何色にも染まっていない新卒も必要だ。しかし誤解を恐れずに言えば、新卒だけが若者ではない。もちろん今後も週休二日制導入はめざしてほしいが、いろんな人にとって働きやすい職場こそ、理想の職場と言える。働きやすさとは本来そういうことではないだろうか。同社、同工場の今後の動きに期待したい。
『入社1年目のニューフェイスは、子育てが趣味!』
「趣味は<子育て>です!」と、笑顔で言い切るのは、試験室でお勤めの中林さんだ。同工場ではいちばん若手の29歳。2023年1月に入社、1年目のニューフェイスだ。
中林さんは、もともと同工場に応援スタッフとして仕事をしてこられたが、縁あって正社員として就職された。応援スタッフとして来ているときに、同工場のことを知りつくしたうえで就職されたということは、工場にはそれだけ魅力がある、ということではないだろうか。同工場の魅力についてうかがうと、「皆さんが言われるように、花井社長が社員のことをすごくよく考えてくれているというのは感じます。入社間もない自分に対しても声をかけてくれますし、ほかの社員さんとも親しく談笑されているのを見かけます」。同社内では、花井社長ご自身が、会社のムードメーカーでもあるようだ。
仕事の現場ではどのような感じだろう。
「何か分からないことがあっても、誰にでも聞きやすいですし、すぐ教えてくれるので助かります。聞きやすい環境なのは間違いないですね」。そのおかげで仕事もメキメキ腕を上げ、今は生コンの品質管理で工事現場にも出向くことがあるという。
気になる休みについてうかがうと「子供が3人おりまして、参観日とか運動会とか、平日や土曜日に学校の行事のときも、入社したての立場にも関わらず、有給休暇を取って気持ちよく休ませてもらっているので、すごくありがたいです。今では、子供の友達とも親しくなっています(笑)。とにかく休みを取りやすい環境ではありますね」。もちろん有給休暇だが、同社では誰でも気兼ねなく取れるのがうれしい。
取材に対応いただいた中林さんの笑顔には、家族を大切にする強い意志と喜びが感じられた。