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近畿生コン関連協議会

インタビュー・対談

生の声から、生コン業界動向や気づきを読み取る。

生の声から、生コン業界動向や気づきを読み取る。

  1. 大阪府砂利石材協同組合 千石 高史 理事長

2018.06.25

大阪府砂利石材協同組合 千石 高史 理事長

砂利・砂で生コン業界を下から支える。まだまだ課題はあるものの、夫婦での健康診断の実施や、リフレッシュ休暇を増やして、若者が働きやすい環境を整えたい。

千石 高史(せんごく たかふみ)
大阪府砂利石材協同組合理事長
社団法人 日本砂利協会
(株)千石 代表取締役

労働環境を、整えたい

安心感のある組織に

大阪府砂利石材協同組合、千石理事長にお話を伺います。

よろしくお願いします。

理事長が運営されている大阪府砂利石材協同組合は、具体的にどのような業務をされている組合ですか。

当組合は、生コンの原料たる砂・砂利を各生コン業者に納める、という仕事を主にさせていただいています。そういう業者の集合体です。

この協同組合の歴史は長いのですか。

昭和25年にできておりますので、もう60年近くになっています。

生コン業界を本当にそれこそ下から支えていく団体というか、そういう会社の集まりということですよね。その骨材業界から見た、最近の生コン業界をどのように思われますか。

非常に価格が安定してきていて、非常に安心感のある組織に変わってきたという印象は受けております。

「変わってきた」ということは、過去には別のイメージがあったということですか。

過去においては非常に生コン業界自体が不安定でしたね。不安定というのは、需要に対しての供給過多になっていて、その中で価格が下落し続け、さらにその中で、材料を納める側にしても価格が安定しないので、いつ値下げという話が出るのか。そういうことに常に神経をとがらせながらやっていたのが現実なので、そういうことがなくなってきているという意味では、安定しているということです。

大阪広域生コンクリート協同組合では「価格が安定してきた」とお聞きしました。こうした背景には何があると思いますか。

やはり広域協組(大阪広域生コンクリート協同組合)の運営基盤が非常にしっかりしてきたということが、まず第一に挙げられると思います。

やはり、これは装置産業(一つの施設を使って、そこから大量に出荷するという産業)ですから、やはり協同組合方式によって基盤を安定させることが、全てにおいて有利だと思います。そういう点で今、非常に広域協の運営が安定していることが、非常に基盤強化につながっていって安心できる、ということが考えられます。

大阪府砂利石材協同組合自体のまとまりというものは、どうでしょうか。

当初、あまりまとまりがないと感じていましたけれども、今、協同販売事業をするということで話が進んでいます。非常にまとまりは出てきていて、大阪府下の生コン工場に対する供給率は、組織率にすると、ほぼ100%カバーできるだけの組織率になったというふうに考えています。

やはりみんなで力を合わせてというか、協力し合ってのほうが業界も盛り上がっていくということですね。

そうですね。

砂利業界で問題視されているようなことはありますか。課題であったりとか。

課題は、やはり陸側と海側と二つのところから材料の供給・納入をするんですけれども、まず海側から運ばれてくる砂・砂利については、運搬する船が非常に老朽化してきている点が挙げられると思います。その老朽化した船を、新しくつくるだけの船運賃を上げられないと。ですから、新しい船を早急につくるというのが喫緊の課題だと思っています。

あと、陸側はダンプトラックを使いますよね。砂・砂利をコンテナに載せるのですけど、やはりその過積載の問題はすぐに解消しなければいけない問題だと思っています。

労使関係を考える前に人としてのけじめを果たすことが大切

働きやすい環境作り

どこの業界も今、人手不足だとか、人手があっても人材不足と言いますか、適切にきちんとやってくれる人を確保するのが、なかなか難しいという話をよく聞くのですが。

やはり人材については、集まりにくい業界になってきているのかなと思います。ですから、皆さん高齢化が進んでいるような印象は受けています。

全体的に若い世代が入ってきにくい。それはなぜだと思いますか。

それは、やはりしんどい仕事はしたくない、ということがあるんだろうと思いますけれども。

やはり仕事内容はハードですか。砂利とか骨材。でも、手で運ぶわけではないですよね。

今は手で運ぶわけではありません。一昔前までは機械化もされていませんでしたけど、今はほとんど機械化されていますので、環境的にはだいぶ改善されてきていると思います。

若い人たちにもっと働きやすい環境をつくる。そのときに、やはり問題として出てくるのが、雇用者側と労働者側の関係性です。これはすごく大事だと思うんですけれども、千石理事長は健全な労使関係ということにおいては、どのようなお考えを持っていらっしゃいますか。

健全な労使関係というのは、会社というものをどういう捉え方をするかで、労使関係はガラッと変わってくると思います。労使関係というと、すごく上下の関係をイメージさせるものですが、それはとても嫌でね。

つまり、会社を家族に例えて考えるとわかりやすいと思います。私も家族がいます。会社に勤めている労働者も、それぞれの家庭では大黒柱。この大黒柱が集まっているのが会社。それで会社が成り立っている。だから、会社のかじを取る人は常にそれを意識しないといけません。それを考えないと、偉そうに言ったりとかいうことにつながってくるので。だから、私は労使関係というものに垣根があるというふうに感じるところがあります。人によって考え方は様々だと思いますが、労使関係を考える前に人としてのけじめを果たすことが大切。私はこれが常に頭の中にあります。

労働組合についてはどうお考えですか。

私は、労働組合がなくてはならないとは思わないんです。だけど、労働組合があることによってやっぱり全体が引き締まるということもあるでしょうしね。

でも、会社の方針が適切であれば労働組合の必要はないだろうし、逆に、労働組合があることで関係がギクシャクすればこれはマイナス。しかし、会社を動かす人が贅沢三昧をしたりとか、そういうことをするなら、僕は労働組合があるほうが働く人のためにはいいだろうというような気がします。

労働組合がないほうがいい会社もあれば、あるほうがいい会社もある。そういうふうに思うことが多いのでね。それぞれの会社に歴史というものがあって、経営状況の良し悪しで、従業員にできることとできないことがある。できるのにしないという態度を経営者がとれば、それはただの欲深いだけの人になってしまいますよね。

例えば、生コン業界は休日が増えていると聞いています。20年前から比べたら大違い。

20年前というのは土日なんて休めない。夜も働くのは当たり前。そのような環境では全然なくなってきている。だから、比較的週休2日で連休は休みというのが定着してきてます。その中で、今度は会社がみんなのために何を提供できるか、ということを経営者が考えなければいけない。やっぱり労働組合が必要な会社なのかとかね。

そして次に考えるのは、そうやって会社が豊かになってきたのであれば、福利厚生ということをやはり考えてあげないといけない。いけないというのは、ちょっと口幅ったい言い方ですけれども、それはすべきことだと思っていましたね。

ですから、弊社の場合であれば、生コンが安定してきたことによって全ての関連事業が安定してくる。そうなってくると、安心して将来を見据えることができるんですね。そうすれば、福利厚生も長期的な展望ですることができる。

平成30年1月から、健康診断とリフレッシュ休暇を必ずとってもらう制度を設けました。健康診断については、「保険の適用外の検査も会社負担で全部受けてください」という制度を設けました。

これは1年に一回、働いている人と、その配偶者の人にも受けてもらう。保険適用外の受診でも、係る費用は支給するので「ご夫婦で受けてください」とお願いしています。ご夫婦で受診された場合の費用は15万円。独身はその半分。そのうえで受診結果を会社に報告してもらうことにしています。結果の内容は個人のプライバシーもありますので、問題が生じない制度も設けました。

あとは、やっぱり皆さんに会社に来てもらっているわけですけど、会社に来て仕事をしていれば、朝早かったりとか夜遅かったりとか、当然あることなんですけど、それは皆さんが家族の時間を削ってきてくれているんですね。それがとてもありがたい話なので、3年に一回、有給休暇以外の休日を増やして、「家族全員で旅行に行ってください」という制度を、今年の1月から設けました。それについても、ひと家族について20万円の現金を支給します。条件は、必ず家族と行くこと。全体の半数程度のご家族がこの制度を利用してくれました。

私は、先ほどお話を聞いていて、「ああ、本当にそうだな」と思ったのが、労働組合ってもちろんあっていいものだし、労働組合自体が全部悪いというわけではないけれども、一部は暴走してしまう労働組合のお話も聞きます。そこについてはどう見られていますか。

やはり労働組合もいろいろな活動をされていて、もちろん活動すること自体はなんの問題もないという認識は持っています。ただ、人に嫌がられることや、人に迷惑をかけることをしてはいけない。これは子供のころから教わるわけで、度を超えるとやはりいけないと思いますね。

ですから、この業界でいうと、連帯労組という名前が挙がってくるかと思いますけれども、私どもも連帯労組とは争議がありました。最終的には最高裁まで闘いました。10年かかりましたけど。

10年もですか。

10年かかりましたね。労使関係なしという結果をいただきましたけど、その過程で思ったのは、「彼らが必要な時代もあっただろうな」というふうに思います。

だから、20年前であれば、先ほど言ったように休みもないとか、夜中も出てこいとか、人を道具のように扱っていた時代が、さかのぼればですよ。もっと古い10年、20年さかのぼれば、もっとひどい時代があったんだろうなと。そういう時代には、強硬的なやり方も必要だったかもしれないけれども、今は世の中全体がそういう風潮ではないですから。

そうですね。

だから、今となっては必要のないやり方だったなと。むしろ今は、話し合いで分かることのほうが多い時代になっているし、逆に彼らが必要とされた時代のやり方を使えば、社会が受け入れません。これからは対話の時代であるというふうに思います。

非常にいい試みだと思います。

このインタビューは、「結」という業界誌を創ろうという企画で、今、インタビューをさせていただいているんですけれども、創刊号の発刊にあたって、一言メッセージをいただけますでしょうか。

非常にいい試みだなというふうに思っています。過去には労働組合の機関誌なるものが、いつのまにか会社のポストに投函されていたことがありました。今回のように、関連される皆さまの声が、きちんとした形で正しく業界の関係者に伝わるということにおいて、非常に革新的なことだと思うし、業界のイメージ向上につながると思います。『うさん臭い業界』というのは人は敬遠しますのでね。

やっぱり、連帯という労働組合があることによって、みんなが就職するのに尻込みをする。会社側も採用するのに尻込みをする。採用する人の背景に連帯労組がいるのではないか、人を最初から色眼鏡で見てしまう。こういうことがそもそも良くないんですよ。こうした現状を解消するために、やはりこういう公のみんなの声が公平に反映された機関誌ができることによって、労働組合の活動も理解される。「この業界ではみんな安心して働いていますよ」ということがアピールされるのであれば、この機関誌については大賛成です。

生コンに関連する皆さんがインタビューを受け、それぞれの立場から意見を述べる。読む側にしても「そういう考え方もあるのか」と関心を持っていろいろなものを吸収することによって、正しい方向に業界が進んでいくんだろうなという面では、非常に画期的なことだし、期待して見ているところです。こんなきちんとした誌面作りというのは、おそらくこの業界ではなかったと思うので、非常にいい試みだなというふうに思います。

すごく心強いお言葉をいただいて、ありがとうございます。大阪府砂利石材協同組合の千石理事長にお話を伺いました。ありがとうございました。

ありがとうございました。

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