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近畿生コン関連協議会

インタビュー・対談

生の声から、生コン業界動向や気づきを読み取る。

生の声から、生コン業界動向や気づきを読み取る。

  1. 関西圧送協同組合 清田 正春 理事長

2018.06.25

関西圧送協同組合 清田 正春 理事長

経営者は旧体制との関係を断ち、関西圧送協同組合を結成。労働者は団結して組合を組織し、独自に現場をパトロールして元請けの信頼を獲得。

清田 正春(きよた まさはる)
関西圧送協同組合理事長
エム・アンド・エム有限会社代表取締役

経営者も労働者も、団結

圧送業の現状

関西圧送協同組合、清田理事長にお話を伺います。よろしくお願いします。

よろしくお願いします。

コンクリート圧送業というのはどういうことをするのでしょうか。

生コンクリートの圧送の仕事というのは、まず生コン工場で生コンを練りますよね。練ったものをミキサー車で作業する現場まで運んでもらって、我々が持っているコンクリート圧送車という、特殊作業ができる車で、現場の打設箇所に生コンクリートを送り込むまでの作業です。

福島県での原発事故の際、緊急処置のためにポンプ車(圧送車)で水を使って冷却作業していたのが報道されていましたが、あのような感じで、生コンを下から押し上げるんですよ。だから、民間の仕事でしたら、ビルの高所作業などはブームと呼ばれる配管のあるポンプ車で圧送しなければ仕事ができないという感じなんです。

一般の人は普通には扱えないですよね。

そうですね。そのなかに、特殊な油圧装置と、圧送するシリンダーというのがついているのですが、操作するには国家試験の圧送技能士という免許が必要となります。

それを扱ってお仕事するには、専門的な知識と技術を身に付けてからじゃないとできないですね。

そうですね。講習を受けて、試験も受けて、現場での実践で何年もしながら覚えていく、という感じですね。

人手不足と皆さんおっしゃるんですが、圧送業はどうですか。

そうですね。やっぱり3Kと言われて、危ない、汚いという感じで。作業というのは朝早いんですよね。夜も遅い。建設現場での作業がしんどいというのがあって、募集をかけても、なかなか来ないというのは現状です。

それに対しての打開策とか、業界としては何か考えていますか。

うーん。やっぱり、元請けさんには以前から言っているんですけれど、まず打設開始、要するに作業開始時間をなるべく遅くしてもらう。そうすれば、朝出る時間が少しでも遅くなるので。あと、生コンの数量をリューベと言うのですが、これを極力少なくすれば早く終わるんです。

ところが工程上なかなかそうもいかず、大きな現場などは大量打設といってたくさん打設します。そういうときは残業になるんですよね。ポンプ車は生コンが付着しますから、洗浄作業や片付けなどの作業を終えて帰社すると、帰宅時間も遅くなります。ですから、生コンの打設数量を考えてもらえたら帰宅も早くなるのかと。

あともう一つは、ポンプ圧送だけに限らず、建設現場の労働者は『研修生』と言って、いまならベトナムの人が結構増えているんです。そういう人たちを会社で抱えて現場に派遣する、一緒に連れて行くというのがかなり増えています。そういうので、人材不足をちょっとまかなっているかなという感じはあります。

海外の方とのコミュニケーションなど、現場での課題があるのではないでしょうか。

そうですね。通訳の先生がたびたび会社に来て日本語を教えています。ポンプ車は運転するオペレーターが作業を兼任するんですけれども、日本語を教えながら作業を進めています。あと日本の現場では漢字が多いですから、漢字を読めるように。そして危険作業を伴うときには、必ず優先してそれを覚えるようにとか。危ない作業をするときに「やめろ」とか「ストップ」というような、危ないときに発する言葉を優先して覚えるようにということは、かなりさせています。

経営者のための協同組合を

関西圧送協同組合は、いつごろ立ち上げられたんですか。

去年の10月です。

まだまだ立ち上がったばかりというところですね。

そうですね、いまで半年と少しというぐらいですね。

関西圧送協同組合ができる前も、協同組合的な組織というか、そういう動きはなかったのですか。

以前は近畿圧送協同組合というところに在籍していたんですけれど、ここは労働組合(連帯労組など)に支配されている、そういう協同組合であったので。僕なんかはかなり以前から、経営者のための協同組合ということを前面に出して、そういう労働組合に支配されている、旧執行部とかなり対峙したというか、もめたりもしたんですけれどね。結局、上についている労働組合(連帯労組など)が強く、経営者が追いやられているのが実態で、なかなかことがすすまないので、脱会しようと去年の4月くらいに表明し出たんです。

おかしな話ですよね、協同組合ってそれこそ、先ほどおっしゃったように、経営者と労働者が協調するべきなのに、労働者のほうが強くなってしまっていたと。

労働者というよりも、労働者を使って、労働組合という名をかたっている組織。ほぼ、たかり業者(団体)ですけどね。

そういう一部の労働組合が力を持ちすぎてしまっていると。

そういうことですよね。そういう人達が裏から圧力をかけて、経営者に自分らの意見を代弁させるんですよね。

それが行き過ぎているということですね。

そうですね。行き過ぎて、結局その政策的なものとか、何のために組合があるのかがわからない。関西圧送協同組合には、経営者のための協同組合だという考えの人が残っているんです。大体、元請けさんに仕事をもらって、会社や従業員が給料をもらえるんですけれど、あの人たちは、元請けさんとは「対等」だとか、「こちらが言った約束は守ってもらう」「こちらが言ったルールを聞いてもらう」というのが大前提ですね。だから元請けさんの意見は、あまり通らないですよ。

元請けさんからしたら、「ちょっとあそこいやだな」、「関わりたくないな」ってなってしまいますよね。

そうでしょうね。でも関西は独特ですよね。昔から労働組合というものが強いのでね。それに逆らうというか、異議を唱えると、すぐ報復的な措置をとられるということで、仕方なく(言うことを聞いてしまう)。だからいまも、大体の元請けさんは、ポンプ業界に限って言えば、労働組合とくっついているので『仕方なく』使っている。主張などすれば、また現場に嫌がらせを受けたりしますので、「黙って、ここを使え」といわれたらここを使う。(今の)元請けさんに指名権はありません。元請けさんは、「ここのポンプ屋がいい」「ここのポンプ屋さんがよく仕事する」ということで使うものですが、現状は「ここを使え」と逆に言われるわけです。

それでいろいろな弊害があって、清田理事長とほかの何社かは、「ちょっと離れよう」ということで別れたんですね。

そうですね。最初、5社と僕とで離れたんですけど、いまちょっと増えてきていますね。

お客さまに安心していただくために現場パトロールを行っています。

健全な労使関係とは?

労働組合のお話が出ましたが、清田理事長が考える健全な労使関係というのは、どういったものですか。

毎年、労使で春闘をして、そのなかで賃上げのこととか、仕事の改善の中身であるとかの話をするというのはいいと思うんです。しかし、連帯労組とか近圧労組というようなところは、労働者のことというよりも、そこの組織を維持するための、結局はお金ですよね。解決金もどきのものを取るためだけの政策を強要しようとするわけです。そういうのには同意できませんよね。だからかなり揉めはするんですけれど、正直、最後は動員かけて止めるだとか、ストするだとか、そういう類のことをすぐ言われるので仕方なく譲歩する。この二労組は以前から変わらないという現状ですよね。

いま現在、関西圧送協同組合を別につくって、(連帯労組など二労組)は面白くはないと思うんです。嫌がらせというか、圧力のようなものはあるんですか。

ありましたよ、かなり。会社の個人的なものもあるんですけど。表明した後、8月ぐらいから、かなりの嫌がらせがあり、現場にもいきました。現場の本社なり支店から呼ばれましてね。現場への嫌がらせで多人数で押し寄せて、「関西圧送協加盟の会社を使うな」「使うなら、元請けまでいく」「施主まで行く」「どういう元請けをつかっているんだ」「どういう指導をしているのか」「現場でこんな建設違反をしている」というようなことをチラシに書いたり、それをまいたり。(連帯労組などの)18番ですよね。車で街宣するという類のことをやりますのでね。かなり元請けさんとしては困ると。「悪いけど、この現場は、ちょっと代わってくれないか」と。

僕らは契約をしてから仕事をするんですけれど、契約途中で切るというのは、よっぽどの理由がないと、通常では切れないんです。ところが、それをしなければならないほど追い込まれるということで、そういったことが去年の10月以降かなり増えて、その対応に追われました。一カ月、二カ月ぐらいは本店・支店に、何回も足運びました。しかし、言うことはみんな一緒で、「ちょっと待ってくれ」と。いまこの連帯労組や近圧労組がやっているような行動が収まるまで待ってくれないかと。我々も仕事をもらっている立場ですし、元請けさんは、施主さんに迷惑かけるわけにいかないから「悪いけど、関西圧送協組は、潔く現場から退いてくれないか」と。

「分かりました。そういうことでしたら、我々は迷惑をかけるわけにいきませんから、どこから仕事もらっているというのは知っていますから、それはそうさせてもらいます」と言って、かなりの現場を離れたということはありました。

作業する方というのは、そういう協同組合と労働組合でもめているとか、分からずにいる人たちは、結構戸惑うのではないですか。

我々はポンプですけれどもコンクリートの業界ですから、我々のところの従業員も含めて、関西圧送協同組合の従業員さんも、こういう問題はよく知っているんです。実際に10月に辞めてスタートしたときに、11月ぐらいの時点で、従業員のほうで勝手にと言いますか、労働組合を結成したんですよね。名前を関西圧送労働組合というんですけど、いま80人ぐらいいます。

何の動きもするわけではないんですけれど、とりあえず、給料のことはさておいて、現場にパトロールに行こうと。手の空いている人が現場のパトロールに行って、まずは自分のところの車の不備がないかということを、現場と話すということから始めています。それが定着してくると元請けさんは安心しますからね。

これは、自分のところの車が何かないかと見に来てくれているんだと。文句を言いに来ているのではないとわかってくれる。

そういうことから始まって、いまはAという元請けさんがいれば、ここに関圧協も近圧協もダブって入っている。違う現場ですけれどね。その元請けさんのところに、支店なり違う現場などを見に行って、「パトロールしますよ」という格好を見せているんです。

そうすると、かなり元請けさんも安心するし、近圧労組、連帯労組なんかが現場に来て、嫌がらせをするのを防げる場面が多々あったんですよ。それが分かってきたので、重点的に空いている人間がパトロールしようということを、いまかなりやっているみたいです。

労働者の方も、一致団結して、みんなで工夫してやっているというところですね。

そうです。それはやはり、仕事を取られると、自分たちの給料にも影響すると分かってきたんでしょうね。ああいう変な、労働組合とかたっているような業者(団体)に邪魔されないように、自分たちで守っていこうというのが、やっと分かってくれたと。

現場の要望に応えられる会社に

そうあるべきですよね。どうですか、コンクリート圧送業に関して、この1年間をどういうふうにしていきたい、どうなっていくであろうという展望も教えていただければ。

いま近圧協に残っている業者さんも、元我々の仲間が多数いるんです。そしてそことは一線を画す、労働組合と一体となった業者さんもいます。あと一つ、圧送協同組合って特殊なんですけれども、ポンプの仕事というのは、作業車を運転して現場に行くものですから、プラントのように、固定されて、そこから練って何分という距離とかではないんです。車が走れるからどこにでも行けるんです。福井に行くときもあるし、奈良に行くときもあるし、岡山まで行けるんです。

行って作業できるというのがポンプの作業、仕事なんです。

あと問題となるのが仕事の内容になりますよね。均一的な作業というのはないんです。いろいろいな職質能力の作業員がいますので、現場の要望に応えられる会社が仕事も増えていきます。労働組合についているような業者さんも、自主的に、そういう意味で営業をするということを分かってもらえると、一緒にやっていけると思うんです。これから先、公共工事的なものは、大阪や神戸も増えてくると思います。そこで、いい意味でよく仕事をする、仕事ができる業者さんが足りないので、業者さんと、経営者の連帯感ができればなとは考えるんですけどね。

安心安定した供給を各会社が一つになって高めていくというのが目標ですね。

そうですね。

今回のインタビュー、「結」という業界誌を発行するにあたり、いろいろな方にお話を伺っているのですが、ぜひ清田理事長からメッセージをお願いします。

このたび全港湾・近圧労組を含め、いわゆる連帯労組と決別して、『生コン協議会』というのが発足したということで、我々も健全な春闘とか、健全な労使関係を築くというのは前々から思っていることです。そこで意見を闘わせるのはいいことだと思います。とにかく、行き過ぎた労使関係とか、いびつな政策的なものはもうないようにしてほしいというのが願っているところです。この先どうなっていくか分かりませんが、見守りつつ、協力できることは我々も協力していきますので、よろしくお願いします。

協賛団体

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