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  1. 第7回「福島県 帰還困難区域視察」

2019.03.06

第7回「福島県 帰還困難区域視察」

結スタッフは、親交のある建設政策研究所等が2018年12月に開催した〈第25回全国建設研究・交流集会〉の現地視察に同行しました。被害から今年で8回目の3月11日を迎えます。福島県の帰還困難区域を訪れ、今も続く悲惨な状況をレポートします。写真は国道沿いに地震で崩壊した家屋や商店など(2018年12月3日撮影)。

◎視察日/2018年12月3日

悲しみすら消えた町、双葉町。

8年目の3.11に臨む福島県双葉町帰還困難区域に、未だ見えない、ほんとうの春。

原発事故の被害による、帰還困難区域を視察。

どす黒い津波に流される船、自動車、家…、TVに映った凄まじい光景に、多くの人が目を疑ったほどの大災害となった東日本大震災。この災害の特長は、地震と津波による被害に加えて、東京電力福島第一原子力発電所のメルトダウン(炉心溶融)など、チェルノブイリ原子力発電所事故と同じレベルの大惨事が起こったことだ。

視察したのは、福島第一原発のある大熊町に隣接し、比較的、放射線量の多い双葉町(以降、同町)だ。同町では、人の通る所は表土から5㎝の土を取り除いて除染しているものの、それ以外の場所はまだ除染ができていない所も多い。山間部や野原など放射線量の高い所には未だ入れない場所もあり、8年たった今でも、除染完了までこの先20~30年かかると言われている場所もある。事前情報によると、双葉町内には、空間線量3マイクロシーベルト(ICRP〈国際放射線業務協会〉から、業者ではなく一般人の方の放射能線量は年間1ミリシーベルトまでと2007年以降、勧告が出されている)程度の地点があり、今も住民は一人も帰還していない。動いているのは、個人住宅を中心とした解体工事の関係者と重機のみだ。

高速道路の区間ごとに放射線量の表示がある

私たちは、バスで現地へ入ったが、放射線量の高いところを走ると、バスの中でも線量計から警告音が鳴り響き、そのときは一瞬バスの中に緊張が走る。特別な許可を得てはいるが長時間は居られないため、「しっかり見届けなければ…」と、気持ちを引き締めつつ現地へ向かった。

故郷に戻れない、双葉中学の卒業生たち。

同町内に入ってまず目につくのが、いたるところにある規制線やバリケートだ。そこは警備員に許可証を見せないと入れない。

視察が許された地域周辺では、一部で井戸を掘って応急的に水が使えるように整備しているが、基本的に水道も下水道も電気も復旧出来ていないという。

視察地域では家は傾き、門は倒れたまま、家の中には生活で使っていた物もそのままで、震災の後片付けもしていない状態のまま残されている。

まさに時計が止まったままだ。この状況を見ると、原発事故だけでなく、地震だけでもかなりの被害だったことがわかる。その震災翌日に原発の事故が発覚し、あわてて避難していったのが見てとれる。

バスを降りて、町立双葉中学校へ入った。同校は、避難場所になっていたため、簡易トイレやトイレの水を流すためのバケツなどが当時のままだ。地震当日は卒業式だったために、教室の黒板には、当時の寄せ書きが描かれたままの状態で残っていた。

教室に残された日直の「めあて」(2018年12月3日撮影)

案内人の話によると、原発事故発生時は情報も無く、先生方も情報を得るのに苦労したとのこと。

とりあえず、入ってきた情報は「西へ逃げろ!」ということだけだったそうで、当時の学校には、約700人が避難する避難場所となっており、校庭は避難民の車でいっぱいだったため、全員その車に分乗してもらい、とにかく西へ向かって避難したそうだ。それからもうすぐ8年、あの日に卒業した子供たちはもう社会人になっているのだろうが、故郷にはまだ戻れない。いつ戻れるかも分からない。そんなことを考えると心が潰れそうになる。

視察を終えた私たちは、皆、重い気持ちで現地を後にした。私たちの帰った後、この町はまた無人に戻る。泣き声も聞こえない。悲しみすら消えた町だ。これほどの悲しみがあるだろうか。地震当日から7年を越える月日が経ったが、まだまだ災害は終わっていないことが確認できた。

双葉中学の内部を視察

同町には放射線による被害はもちろん、避難先での差別などの問題、町の再生の問題などが山積している。しかしそれらが解決されていないにもかかわらず、そんな現実を無視して今も動いている原発・エネルギー政策に憤りを感じながら現地を後にした。福島にほんとうの春は、いつ訪れるのだろうか…。命と安全を守る建設業界の人間の一人として、今後とも成り行きを見届けたい。

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