独占連載「偽装労組」
連帯ユニオン関生支部の正体を暴く。
連帯ユニオン関生支部の正体を暴く。
2020.08.17
半世紀近くにわたって関西の生コン業界に君臨し、<ドン>とよばれてきた武建一委員長が率いるセメント、生コン業界の労働組合・連帯ユニオン関西生コン支部(以降、関生支部)に対する捜査当局の摘発が始まったのは一昨年(2018年)7月。以来、2年を経た今、関生事件はどうなっているのか。現況を紹介したい。
あらためてまとめると、逮捕されたのは武委員長をはじめ関生支部延べ90回、経営者側同7回の計延べ97回。実数は関生支部52人、経営者側7人の計59人。逮捕容疑は恐喝未遂、恐喝、威力業務妨害、強要未遂などで、労働組合史上前例のない大規模な組織的犯罪となった。今回、捜査をしたのは滋賀県警、京都府警、大阪府警、和歌山県警の4府県警。すでに捜査は終結し、舞台は法廷に移っている。逮捕者のうち延べ67人が起訴された。既に一審で有罪判決が出ているのは11人で、すべて大津地裁分だ。京都地裁では三つの事件の裁判が続いており、うち京都府木津市の(株)村田建材加茂生コンクリート工業社長に対する強要未遂事件に関して、初公判が2020年3月18日開かれたことは、Vol.15(2020年3月31日)で紹介したところだ。あとふたつ、近畿生コン(株)(京都市山科区)に対する6,000万円恐喝事件、生コン輸送会社ベストライナー(京都市南区)に対する1億5,000万円恐喝事件の公判は、まだ始まっていない。近畿生コン事件では武委員長と湯川祐司副委員長が2019年7月17日、京都府警に逮捕され、起訴された。同じくベストライナー事件でも2019年9月4日、2人が逮捕され、起訴された。ただ、武委員長の裁判はこの京都地裁分、さらに大津地裁分を含めて、すべて大阪地裁での併合審理となった。
和歌山では、2019年11月14日、湯川副委員長と西山直洋・執行委員(争議対策部長)が、和歌山県広域生コンクリート協同組合(和歌山県海南市)に対する、威力業務妨害及び強要未遂で和歌山県警に逮捕され、現在、和歌山地裁で公判が行われている。
大阪では2018年9月18日、セメント輸送会社・植田組運送店(大阪市港区)に対する威力業務妨害及び強要未遂で、七牟禮時夫副委員長、大原明執行委員(争議対策部副部長)ら16人が逮捕された。同年10月9日には、七牟禮副委員長ら8人が(株)大阪中央生コン(大阪市西成区)に対する威力業務妨害で逮捕され、同年11月21日には植田組事件、大阪中央生コン事件、ダイワN通商(株)(大阪府高槻市)に対する威力業務妨害事件で、武委員長、武洋一書記長、西山直洋執行委員、柳充元副委員長の4人が逮捕された。いわゆる2018年12月に、関生支部がストライキと称して起こした出荷妨害事件だ。このうち、武洋一書記長は同年12月11日、不起訴処分となった。残り3人は起訴され、大阪地裁で公判がおこなわれている。検察側は2020年6月の論告求刑公判で、柳元副委員長と西山執行委員に、執行猶予付の懲役刑の求刑を求めた。判決は2020年10月21日にも行われる見通しだ。武委員長の判決は来年3月になる見込みだ。
一方、勾留されていた武委員長は、2020年5月29日、湯川副委員長は6月1日保釈された。武委員長は計6回、湯川副委員長は計8回も逮捕された。湯川副委員長は武委員長の最側近で、関生支部の<後継者>と言われている。関生支部は今回の一連の刑事事件を<弾圧事件>にすり替え<共謀罪の先取り>などと訴え、人権問題として市民にアピールし、実態を知らない弁護士やジャーナリスト、学者・研究者を取り込み、支援者に名前を連ねさせるなど、その手口は相変わらず巧妙だ。また、元朝日新聞記者の竹信三恵子・和光大学名誉教授を中心に、シンポジウムを開催。竹信氏は今回の関生事件で、ジャーナリストとしては最も熱心な関生支持者である。しかし、その論調は、刑事事件の中身にはふれず、関生支部の不法行為を、<労組>の正当な活動と主張するのだ。事件の核心は、<労組>の名を偽装し、刑事犯罪を実行したことが真実であり、竹信氏の主張はその検証を放棄した底の浅いものだ。関生支部は、結成直前から日本共産党を<不倶戴天の敵>として、<権力弾圧>より一にも二にも優先し、激しく非難・攻撃してきた。その日本共産党の機関紙『しんぶん赤旗』に、集会で反共を叫ぶ反社会勢力である関生訴訟の弁護団や先の竹信氏、関生支部とズブズブのジャーナリスト安田浩一氏らが、<正義の味方>として再三登場する事態も起こっている。その一方で、武委員長に関わる本を出版し、映画まで制作するなど、堕ちた偶像の立て直しにやっきで、そのために巨額のカネをつぎ込んでいる。売られた労働者や、つぶされた中小零細業者の血を絞って懐に入れたカネは、想像を絶する金額のようだ。
次回から、2018年の<セメント出荷妨害事件>について解明する。
※記事をより読みやすくする目的で、偽装労組Vol.4から、強調の意味での「 」や、新たに登場する会社名については、2回目以降の(株)表記を省略しています。