推しプラ
あなたの[イチ推しプラント]はどこですか?
あなたの[イチ推しプラント]はどこですか?
2023.07.10
生コンワーカーの目線で、近畿地域の<イチ推し生コンプラント(工場)>をご紹介する、新企画『推しプラ』。Vol.3は、広域協組・西ブロックの<とどろみ鉱業(株)>(以下、同社)だ。
同社は、大阪府北西部の景勝地<箕面の滝>で知られる箕面市の、都市部から少し離れた止々呂美(とどろみ)地域に立地している。
社名の<とどろみ>は、当地の地名をアピールしたいという地域の強い要望を受けて社名変更を行い、<鉱業>は、生コンの製造販売だけでなく、幅広い事業展開を見越しての命名だ。
「ウチの社名にひらがなの地名<とどろみ>が付いて、近所に新名神高速道路の<とどろみIC>が開通したんで、地域の皆さんも本当に喜んでもらえてると思いますよ」と、にこやかに語ってくれたのは、工場長の松岡成基氏だ。そして高速道路の施工・開通で喜んだのは、地域だけではなく、同社側もそうだった。本社・プラントが郊外にあるため、これまで輸送時間でずっと苦戦をしいられてきた同社にとって、高速道路の施工・開通が大きな変化をもたらしたのだ。
同社のプラントは、新名神高速道路の<箕面とどろみIC>、または箕面有料道路の<止々呂美>を降りて約3分のロケーション。2つの高速道路の出入口のすぐそばにプラントがあるため、大量の生コンを使う道路や橋梁の工事にはもってこいの好立地なうえ、完成後はその高速道路を使って、自社の出荷エリアをさらに拡大することができたからだ。
取締役社長室長の樫尾哲也氏は、「月によってバラツキはありますが、新名神の工事の時には、出荷量が9,000㎥/月近くまで増えたこともありました」と、当時を振り返る。工事が終わった現在、出荷量は当時に比べて減っているが、高速道路を使った輸送を自社の強みに、拡大した出荷エリアを今も手堅くキープしておられる。
そんな同社は、親会社である生コンクリート製造販売の海山コンクリート(株)(兵庫県宝塚市、工場は同西宮市・同神戸市)、解体ガラの受け入れや資源の有効活用を事業とする日鉱商事(株) (大阪府箕面市)と共に、ウミヤマグループの傘下企業として、生コンクリートの製造販売を中心に社会の基盤づくりの一翼を担っている。
所在地 | 大阪府箕面市下止々呂美672-1 |
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設立 | 平成2年3月20日 |
代表取締役 | 藤沢 斉 |
社員 | 6名(グループでは35名) ※うち女性が2名。製造・配車・試験などに従事。 |
出荷量 | 約30,000㎥~40,000㎥/年 |
ミキサー | 1基(2,500L) |
生コン車台数 | グループ会社で所有 (10t/4台・8t/2台) |
●取締役社長室長 樫尾哲也氏
(広域協組 常務理事 西ブロック長)
●工場長 松岡成基氏
●工務課 奥田勇気さん
同社にとっての地域貢献とは、どのような取り組みなのだろう。
同社は郊外に立地しているため、都市部や住宅地のプラントと違い騒音などの問題はない。しかし周囲に企業数自体が少ないため、先に述べた社名変更のように、地元の皆様とは懇意にされている。祭りなどへの寄付や協力をはじめ、水利組合や漁業組合などとの関係維持も、地域の一員として大切な役割だ。「地域との関係づくりは、社長が中心となってやっています。困りごとがあれば手助けをしたりして、地元の皆さんに喜んでいただいているようです(笑)」と、松岡氏。また以前は、地元からの依頼を受けて、就職先として地域の人材の受け入れも行っていたが、道路等のインフラ整備やマイカーの普及によって、都市部への通勤が便利になったからか、現在は行っていないという。これも地域貢献のひとつだ。そのほか、同社が立地する箕面市止々呂美(とどろみ)地域が柚子の産地であることもあり、同市のゆるキャラ<滝ノ道ゆずる>のイラストをバッチャープラントに大きく描き、地域の活性化に一役買っている。
そして、当地の生コンプラントらしいのが<生コンこども110番>だ。地域の子供たちの安全を守る意味で、大阪府推奨の<こども110番>活動に賛同しての取り組みだ。「地域への貢献を考えた時、当地が、大阪教育大学附属池田小学校の事件があった地域に近いことから、地域の子供たちの安全を見守ることを目的にはじめました」と、松岡氏。ドライバーや従業員が、けがの応急手当やAEDの使い方など<普通救命講習>を受けて、グループとして取り組んでおられる。犯罪の抑止力になるとともに、駆け込み場所として機能するよう、無線機を積み、ドラムに<生コンこども110番>の文字を大きく描いた生コン車が、今日も地域を走り回っている。
そしてもうひとつ、目には見えないが最も大きな地域貢献がある。それは同社の本業だ。同社は高速道路工事に携わることで、自社が大きく発展するとともに、地域インフラ整備への支援という意味で、地域社会へ、さらに日本の物流に貢献してきたと言えるのではないだろうか。まさに本業による社会貢献といえる。社員としても、大いに誇らしいことだ。
同社の従業員に対する考え方は、職場の公平性を保つことだ。
例えば休日については、各人の休みの状況を見ながら、また同社だけでなくグループ間でもあまり差が出ないよう、お互いに協力・調整をし合いながら、<1人に(1社に)負担がかからないよう>に注意しているという。「基本的に週休二日の考え方ですけど、我々の仕事は受注産業なので、状況によっては土曜出勤もありますし、工場のメンテナンスなんかも必要ですから、お願いして出勤してもらうこともあります。でも逆に出荷量が少ない時は、代休や有休を使って休んでもらえるように調整しています」と、松岡氏。これなら、たとえ休日出勤しても、1人に負担はかからない。樫尾氏も「この考え方は、残業についてもまったく同じです」と、付け加える。
また同じ考え方から、女性が働きやすい職場をめざしている。同社では、女性が経理や事務をするのではなく、希望により製造や配車、試験などの仕事を担当する。だが、ご家族やお子さんの用事で休みたい、半休にしたいという人には配慮している。「生コン工場は朝が早いので、子供を送ってから出社したいという人には、フレックス的な出社をしてもらえるように取り組んでいます」。様々な事情に対しても、常に公平に対応しているのだ。
そして昨年(2022年)、同社は考え方をさらに進め、トイレをリニューアルした際、ジェンダーフリーの考え方に配慮して、男女の表示をなくす選択をされた。
「リニューアルするならトイレも男女別にしようと思っていたんですが、最近の社会の動向を見て、男女の識別をやめることにしました。部屋の中には男性用・女性用のトイレが設置されていますが、カギは部屋の入口と女性用トイレのドアの両方にあるので、安心して選べます」と、樫尾氏。これまでの工場は男性が多かったため、トイレは男性用のみか男女共用が多かった。それが最近は女性の社会進出の影響で、男女で建屋を分ける傾向が増えていた。ところが同社は、さらにその先、ジェンダーフリーを意識している。将来に備えて、どのような人にも対応できるよう配慮しているのだ。ここまで働く人に配慮している会社も珍しい。
品質に対する同社のこだわりは、厳しい品質管理基準をパスした生コンを提供するという、基本的なスタンスに変わりはない。そのうえで同社独自のこだわりというと、高速道路(トンネル)を使った輸送だ。これは同社WebサイトのTOP画面に出てくる『トンネル輸送という品質管理』という言葉からも、知ることができる。
先にも述べたが、同社は高速道路の施工・開通と共に発展してきた。特に大きかったのは箕面有料道路だ。この道路がてきるまでは、箕面市街や豊中市などの現場まで行くのに、他社より時間がかかることが多かったからだ。完成後は、箕面市街、豊中市、吹田市などの北摂エリアをはじめ、新御堂筋を使って大阪市内にまで、出荷エリアを広げることが可能になった。「これまではゼネコンの担当者さんにも、『50分程かかります』と言うと、『それはちょっと…』と引かれましたが、『トンネルを使うので、10分から15分で行けますよ』と言うと安心してくれる」。これは同社にとって大きな強みとなった。場所によっては、大阪市内のプラントより早く着くこともあるという。ご存じの通り、生コンの品質管理における輸送時間は重要な要素だ。高速道路によるスピーディな安定供給が、生コンの安定品質を実現している。またストレスなく輸送できるため、ドライバーにとっても大きなメリットだ。
そして、トンネルを使うことでもうひとつメリットがある。夏場の生コンの温度上昇抑制だ。つまりトンネル内が日陰になって生コンの温度が上がりにくいのだ。「僕らは勝手に<低温輸送>って言っています」と、樫尾氏は笑う。地球温暖化の影響で、夏場の生コンの温度上昇が問題になっている近年、止々呂美から千里中央までの約2/3はトンネルなので、通るだけで<暑中コン対策>にもなる。
これも、安定品質を実現するための、同社ならではの輸送方法だ。
今年(2023年)から、広域協組がSDGsに向けて大きく舵を切ったように、環境対策は、今社会にとって大きなテーマだ。そんな環境対策に、同社もビジネスとして取り組んでいる。それはコンクリートブロックの販売だ。
同社は、生コンの製造販売だけでなく、残コンをブロック化して、自社やグループ会社の日鉱商事を通して販売することで有効活用を実践している。残コンをブロックにしているプラントは多いが、どのプラントもその販売や保管に苦労している。ところが同社では、よく売れているという。「街中ではニーズがないかもしれませんけど、ウチは山間地なのでニーズがあるんですよ。災害復旧用の土留めとか河川工事でも多く使われる」と、樫尾氏。そのわけは同社の立地と会社の歴史だ。山間部に立地している同社は、もともと鉱山業を営んでいたため敷地が広大で、ストックしておく場所には困らない。また通常コンクリートブロックは1個や2個ではなく、50個、100個、200個という単位のオーダーとなる。だからストックがないと商売として成立しない。まさに立地と敷地面積がものをいう、同社の環境対策だ。
同社の独自性を語るのに欠かすことができないのが、グループ会社間の連携(の良さ)だ。
「例えば午前中、現場の生コン取りが早くて、朝集まった生コン車の台数だけではシンドイ場合、ふつう1社で事業展開をするプラントだと、急に台数を増やせません。でも当社の場合、グループ全体で配車を考えているので、午後からはグループ会社から生コン車を呼んできて対応することができるんです。もちろん“とどろみ”からグループ会社に出すこともありますよ」。つまり現場の状況に合わせて、グループ内で助け合いをしているのだ。「ですから、常にグループ各社の出荷数量やピッチ等の情報を交換して、1つのプラントでグループ全体の生コン車を手配するんです。状況に応じて、必要な現場に生コン車を集中的に配車するという意味で、我々は<集中配車>と呼んでいます」と、松岡氏。
会社側としては、現場のニーズに柔軟に対応できるうえ、働く側からしても、ドライバーは焦ることなく落ち着いて仕事をこなせるため、事故やトラブルにもなりにくい。グループのネットワークを生かした同社ならではの強みと言える。
最後に同社のビジョンについて松岡氏にうかがった。
「今はSDGsの時代ですから、施主様のニーズが多様化して、ゼネコンさんからも低発熱や低炭素型など、特殊セメントを使った生コンを求められることが増えてきています。ですからそんなニーズに対応するために、現在、2台あるセメントの計量器のうち、1台を大きくしようと計画しています」と、松岡氏。つまりSB(スクラップ&ビルド≒リニューアル)だ。たしかに今は、多くのプラントがニーズの多様化を感じている。顧客のニーズを重視することは、いつの時代も重要だ。この計画が受注増の切り札になるに違いない。
加えて求めているのが人材だ。人が使いこなしてこそ、設備は生きる。
「とにかく社員をもっと増やしていきたいです」。どの会社も人材確保に苦しんでいるが、同社では先にも述べたように、会社のことを知っていただくためにWebサイトを開設している。一般企業ではWebサイトの開設が進んできたが、生コンプラントではまだ少ない。そんななか、同社は<ウミヤマグループ>傘下企業のグループサイトとして自社サイトを開設し、自社の情報を開示している。「昨今の就活の現場では、若者が就職先をさがす際に、まずは自分のスマホで企業のWebサイトを見て、その印象で最初の選別を行うと言われていますから」と、松岡氏。その表情は、次代へ向かう責任と希望に溢れていた。
▶同社WebサイトのURL:http://todoromi-co.com/
『声が届きやすい、風通しの良い会社だなと思います!』
お話をうかがったのは、入社4年目に入る奥田勇気さん。以前の仕事は時間的にかなりキツかったうえ、将来の不安もあったことから転職を決意。友人の紹介で同社に入社された。異業種からの転職だ。
「とにかく最初は、分からないことしかないんです(笑)、でも皆さんに『ゆっくり覚えたらええよ』と、生コンの仕事をていねいに教えていただきました。ひとことで言えば<人に優しい会社>という印象が強いですね。あと、異業種から来た者としては人間関係が肝だと思うんですが、とにかく話し合いたいことが言える環境で、自分の意見も聞いてくれますし、それが通ったりもしますので、自分の声が届く風通しの良い会社だなと思います」。
現在、奥田さんは、社内の研修制度等を利用して、コンクリート技士の資格を取得されており、製造と試験室での仕事を担当する。仕事のことをうかがうと「とにかく日々、勉強です!」と、表情が引き締まる。さらに「いろんな仕事があるなかで、自分のやりたい仕事に対して会社が応援してくれるので、やりがいを持って仕事にあたれます」と、満足そうだ。
「以前の会社は拘束時間が1日15時間、16時間とかなり長くキツかったのに対して、今は自分の時間がきちんととれるので、すごくありがたいです。冗談みたいですが、昼食に温かいご飯が食べられるのがまずうれしい(笑)。ブラック業界からホワイト業界へ転職できて、真っ白すぎて文句のつけようがありません(笑)」。
そんな奥田さんは最近、きちんと休日が取れるようになったことで、趣味のオートバイでのツーリングを、仲間と一緒にできるようになったという。
「月に1回~2回、友人はもちろん会社の人たちとも様々な場所へツーリングで出かけ、心身ともにリフレッシュができるので気持ちにゆとりが出て、仕事により集中して取り組めるようになりました」。
同社に入社したことでワークライフバランスが改善された奥田さん、これからも充実した日々を送られることだろう。