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近畿生コン関連協議会

[続]偽装労組

偽りの連鎖が、今はじまる。

偽りの連鎖が、今はじまる。

  1. 衝撃!武委員長解任劇とその背景<10>

2022.08.31

衝撃!武委員長解任劇とその背景<10>

前回(Vol.9)に引き続き、京都北部を営業エリアとする生コン協同組合=京都生コンクリート協同組合(京都協組。以下、同協組)と加盟社に対する関生支部の武建一前委員長と湯川裕司現委員長(当時、副委員長)による恐喝事件の顛末を追う。

前回(Vol.9)は、同協組専属の傭車会社として設立された、小型ミキサー車専門の<(有)ベストライナー>(1997年頃設立、岩本将健代表取締役=当時)の、解散をめぐる<解決金>名目の1億5,000万円の恐喝事件だったが、今回は、<近畿生コン(株) >(京都市)の破産に伴う、同協組に対する6,000万円恐喝事件である。検察側冒頭陳述などによると、6,000万円恐喝事件に至る経過は以下の通りだ。

<近畿生コン>をめぐり6,000万円恐喝事件

ベストライナー事件の後、関生支部は、京都府下の生コン業界の再編を強く推し進めるようになり、京都市内を主な販売地域とし、かつ、協同組合に加盟していない、いわゆる<アウト>の生コン製造業者7社をまとめ上げたうえ、同協組に対しても、生コン製造会社が一致団結し、それによって生コン価格の値戻し、値上げを実現するよう要求するようになった。

しかし、同協組内で強い影響力を持っていた<(株)京都福田>(京都市)の福田俊夫取締役=同協組営業本部長は、関生主導による業界再編や、アウト業者との共闘による生コン価格の値戻し等に懐疑的な立場であったため、同協組は関生支部の要求に応じない立場を明らかにした。

これに対して関生支部は、2015年10月8日から同月中旬までの間、同協組加盟の7社のうち5社に対して、各社の生コンの出荷を阻止。さらに他の2社に対しても、生コン業者や施工主に<コンプラ>活動と称して、些細な法令違反を指摘して工事を妨害した。

そこで、関生支部とのパイプ役だった<(株)京都生コン>の久貝博司社長ら同協組理事の一部は、スト継続による自社の倒産を強く懸念。理事会を開催し、福田俊夫同協組営業本部長の解任や、関生支部の要求を受け入れる決議をした。その後、福田俊夫営業本部長ら2名は、同協組の理事を辞任。<近畿生コン>の田上正男社長も副理事長を辞任した。この結果、同協組の理事は6名となり、うち4人が執行部を構成。重要な案件は、理事会に正式に諮る前に4名の執行部で方針を決定していた。

<近畿生コン>が破産申し立て

翌2016年2月、経営不振を理由に<近畿生コン>の田上社長は、同社の破産申し立てをすることを決意した。まもなく、このことを知った関生支部の湯川裕司被告(現委員長、当時副委員長)は、同月13日、久貝理事らに「<近畿生コン>が破産するそうです。我々は労働組合の立場でいろいろ言わせてもらいます。あなたたちは、生コン業者の立場で近畿生コンに言ってみたらどうですか」と言ったという。その後、久貝理事らは、田上社長に<近畿生コン>の破産申し立てを思いとどまるよう説得したが、同社長は応じなかった。

<近畿生コン>は同月16日、京都地裁に破産申し立てをした。破産申し立てを知った関生支部組合員約70名は、同社の従業員の労働債権保全名目で入れ替わり、同社の社屋等を占拠。他方、湯川被告は、<近畿生コン>の破産に伴う入札で、同社の設備等を<アウト>が落札することを危惧し、久貝理事らに対し、同協組として入札に参加することを要求した。これを受けて同協組加盟業者が、同年8月18日、入札に参加した。結果的には、<近畿生コン>の設備などは、生コン業者とは無関係の業者が落札した。

関生支部組合員が<近畿生コン>の社屋を占拠

武被告は、自身の手帳の2016年2月22日~28日の欄に、<近畿生コン>の破産に関して、「5億 自己破産 京都近畿生コン 17日」などと記載した。また武被告は、<近畿生コン>の不動産を落札した業者から、同社の社屋などを占拠している関生支部組合員を、立ち退かせられないかと相談を受けた人物と、2016年9月23日頃に会い、立ち退き料交渉をした。その際、武被告は「もう4,000万円くらい欲しいわ」と、<近畿生コン>の破産に関連して、立ち退き料以外に別途、現金を得る意図がある旨の発言をした。関生支部組合員による<近畿生コン>の社屋占拠活動は、関生支部内で<近畿生コン分会闘争>と呼ばれていた。<近畿生コン分会闘争>は、同年10月16日、武被告らが出席した関生支部定期大会でも報告された。関生支部組合員による占拠は、同年10月28日頃まで続いた。そして、<近畿生コン>の破産は、6,000万円の恐喝事件へと進展する。

湯川被告が6,000万円要求

同年10月26日、湯川被告は京都市内の喫茶店で、久貝理事に「<近畿生コン>もちゃんとできたんでしょ。他の生コン屋にいかなくて良かったですね。ついては我々も人件費とかかかっているので。シェア(マーケットシェア=市場内で当該企業の売上が占める割合)も買い取っていただきたいと思いますけども。<近畿生コン>の件で解決金として6,000万円払っていただきたいと思ってます。あなたがたも仕事が増えるからええやろ」などと、<近畿生コン>が破産申し立てしたことに伴い、同協組から<近畿生コン>に割り当てられた生コン納入業務のシェアが、同協組に加盟する他の生コン製造会社6社に分配されたのだから、同協組は関生支部に解決金6,000万円を支払う必要があると告げた。

久貝理事は同月末頃、他の理事に湯川被告から6,000万円を要求されたことを伝えた。

さらに、湯川被告は同年11月1日、ホテル内の飲食店で、久貝理事ら同協組の理事に対し、「<近畿生コン>の解決金で6,000万円いるんや。俺ら、これだけ人も費用もかかってんねんやから、解決金払うの当たり前やろ」などと言い、<近畿生コン>の破産申し立てに関して、解決金を支払うよう改めて要求した。

事件当時の同協組理事長ら執行部は、湯川被告の要求は何ら根拠がないものと認識していたが、関生支部から度重なる出荷妨害を受けて恐怖心を抱いていた。そのため、要求を拒否すれば、関生支部が組合員を動員して妨害行為を実施し、同協組の加盟各社に甚大な損失が生じると考え、これを避けるためには、要求に応ぜざるを得ないと考えた。理事長ら執行部は、同月7日、同協組の理事会で関生支部に対して現金6,000万円を支払うことを決議した。同月17日、久貝理事は、同協組の経理担当職員から、同協組名義の口座から払い戻した現金6,000万円を受領。同日、久貝理事は、京都市内の喫茶店で、湯川被告に現金6,000万円が入った紙袋を手渡した。

税金対策で<環境整備委員会>通じて支払い

同協組は、関生支部に対する現金6,000万円の支払いについて、経理上、問題になることを危惧し、久貝理事が2016年11月1日付で設立した<京都地区生コン環境整備委員会>(京都市、以下、同委員会)を通じて支払ったように処理することとした。その規約で、“京都地区の生コン業界の安定的な発展と労働者の福祉の向上を図るため、環境整備に係る事項に関する意見交換、連絡協議、その他必要な活動を行うことを目的とする”と掲げているが、そもそも同委員会は、同協組が関生支部に対して根拠なく支払う現金が、税務上問題にならないようにするため立ち上げられた組織だった。2017年になると、同委員会と関生支部の関連会社<(株)ユニオン共済>との間で、毎月の出荷数量1㎥当たり200円を上乗せする<業務委託契約書(写真下)>が締結された。

さて、湯川被告は久貝理事から求められて同月18日頃、同理事に対し、関生支部名義、同委員会宛ての現金6,000万円の領収書を渡した。そしてその前日の同月17日、関生支部執行委員長武建一名義の口座には、現金4,000万円が入金された。

久貝理事が設立した<京都地区生コン環境整備委員会>と、関生支部の関連会社<ユニオン共済>が交わした<業務委託契約書>。

久貝理事が設立した<京都地区生コン環境整備委員会>と、関生支部の関連会社<ユニオン共済>が交わした<業務委託契約書>。

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